虚構の城/高杉良

虚構の城 完全版 (角川文庫)』を読んだよ。企業体質って変わるのか…。

企業小説の推薦図書の中に入っていた本書。そして、高杉良氏のデビュー作だとか。半沢直樹の人気にあやかってか、このところこの手の企業小説が本屋の平台に並ぶことが増えているような気がしないでもない。

舞台は大手石油会社。主人公はその社員である技術者。だが、組合問題の相談を受けたばかりに、上層部から目を付けられ、技術と関係のない部署に左遷される。技術者だったらそこで腐ってしまいそうだが、そこが優柔不断な主人公。それなりに仕事をこなしていくうちに、新たな展開を迎える。と、ざっとこんなあらすじ。

ポイントは二つ。一つはこの石油会社の企業体質。創業者が神格化され、忠誠を尽くす。だから、時間外勤務は当たり前、労働組合なんてもってのほか。あまりに日本的な経営といえばそうなんだけれども、当時としても「特殊な会社」だったんだろうね。そうでなければ、小説のネタにはならなかったのだろうし。

もう一つは主人公である田崎の優柔不断さ。女性に対してもそうだし、転職の際にもあまりに心が揺れ動きすぎる。あぁ、それだから小説になるのかもしれないけど…。読んでいるこっちはハラハラしどうし。でも、そこが理系男子っぽくていいのかも。

ところで「あとがき」を読むと、完全版にした際に結末あたりを書き換えているような…。あまりに呑気な終わり方なので、この書き換えはちょっと失敗なのではないか?という感じ。
いや、それでもいろいろな会社があって、いろいろな人がいて、いろいろな思惑があって、社会って楽しいねってことがよ〜く分かりました〜。

虚構の城 完全版 (角川文庫)
虚構の城 完全版 (角川文庫)高杉 良

KADOKAWA/角川書店 2015-02-25
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