黒の試走車/梶山季之

黒の試走車 (岩波現代文庫)』を読んだよ。50年ほど前の話。

いわゆる企業小説という類で、代表的なものが取り上げられている文書に載っていたのが本書。企業小説といっても、また様々。本書は企業スパイをテーマにしたものと言っていいかも。

舞台は1960年頃の日本。業界は自動車業界。新車開発に各社がしのぎを削る中、ライバル社の情報をいかに早くキャッチし、その上をいく戦略を立てるかが勝利するための重要な要素になる。
で、あの手この手。今で言うネガティブキャンペーンを張ったりするのも、その戦略の一つ。そのネガティブキャンペーンの一つが本書の事件の発端になるんだけど。

そして、スパイ活動。社内でもその活動が秘匿されていたり、社外の人間を操って、敵の情報を探り出したり。いかにもありそうなのが、“女”を使うこと。本書でも“女”の動きが重要だったりするわけ。

そう、情報というと今ではデジタルをイメージするけれども、当時は完全なアナログな環境。紙の手帳を盗み読んだり、重要文書を廃棄物から漁ったり。非効率だけど、それなりの創意工夫が面白いよ。それでも、

朝比奈は、ある一つの正確な情報が、見方を一挙に勝者の地位にのし上げるのだということを、まざまざと教えられたのである。
という主人公の思いは、デジタルであろうとアナログであろうと変わらないよね。

最後に気になること。当時は飲酒運転って可だったのか?ってこと。明らかに飲んで運転している記述があるんだけど…。それでも許される時代だったんだね。

黒の試走車 (岩波現代文庫)
黒の試走車 (岩波現代文庫)梶山 季之

岩波書店 2007-07-18
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