還るべき場所/笹本稜平

還るべき場所 (文春文庫)』を読んだよ。K2に憧れる…。

公開中の映画「春を背負って」が気になっていたんだけど、図書館での予約は多数。で、原作者である笹本稜平氏の著作を見ると、山岳小説が他にも多々有り、その中の一冊が本書。文庫版ながら、解説文まで含め623頁もあるので、一瞬だけたじろいだが、読み始めると、面白さにグイグイ惹かれて、あっという間に読了したという感じ。

ストーリーの舞台の中心は、カラコルム山脈のブロードピーク。世界第12位の高峰。ただ、それだけではストーリーの広がりがないわけで、同じくカラコルム山脈の世界第2位のK2がキーワード的な位置づけとして登場するよ。

登場人物も多数。主人公とそのパートナー。そして、山仲間としての友人たち。さらには、ブロードピークへの公募登山に参加する医療機器メーカーの会長氏とその秘書。もう一つ、大切な脇役としては、現地のサポーターとして高所ポーターが何人も。それぞれがそれぞれのシーンの中で重要な役割を果たし、ありきたりなセリフだけど、まさに人生の縮図という感じ。

そう、人生と言えば、登場人物から発せられる人生観に対する言葉が印象的。特に、医療機器メーカーの会長氏の言葉が印象的。

<夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。そうやって自分を騙しおおせて死んでいけたら、それで本望だとわたしは思っている>
と言ったり、
<真の人生は不可視だ。それは生きてみることでしかかたちにできないなにかだ。そしてそれこそが、この世界で生きることを喜びに変えてくれる種なんだ>
とも言う。人が生きるって何なのだろうなんて普段は考えたこともないけれども…。やっぱり、非日常から抜け出して、山に登ってみないと思いつかないようなこともあるんだろうなぁ〜。
還るべき場所 (文春文庫)
還るべき場所 (文春文庫)笹本 稜平

文藝春秋 2011-06-10
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