生物学的文明論/本川達雄
『生物学的文明論 (新潮新書)』を読んだよ。ナマコ的な生き方も人生だ。
著者は以前に読んだ『ゾウの時間 ネズミの時間』の本川達雄氏。本書に書かれているサイズの話は、この『ゾウの時間 ネズミの時間』と重複する部分はあるけれども、それもまた復習という意味で楽しく読める。本書は算数的な頭は使わなくても済むし。
で、本書の冒頭はサンゴ礁の話。サンゴ礁を例に、生物多様性に話を繋げているよ。サンゴ礁は貧栄養の海。それでも、サンゴと褐虫藻の共生とその間の資源のリサイクルによって、多様な生物にあふれた豊かな海になっている。量が多いことが豊かなことだと考えがちだけれでも、そうではない。
多様だ、というのは質がいろいろあるということです。量はほどほどでいいから、質の違ったものがいろいろあることが豊かなのだと、豊かさの定義を変えればいい。生物多様性を大切にするとは、多様とは豊かなこと、だから大切にするのだという発想に基づいて、生物多様性も議論されるべきだと私は思っています。と筆者。ここからも、環境問題、エネルギー問題が見えてくる。
生物と水の話も面白い。人体の60%以上は水分であること。生物の細胞はほとんどが水。これが生物の特徴。どうして、水っぽいのか?それはリサイクルを考えているから。
生物とはそもそも、他の生物のつくったものを利用し、自分もまた死んだら他の生き物に利用されるという形で物質のリサイクルをしているものです。資源をリサイクルし続けるからこそ、38億年もの間、生物は続いてくることができました。そして水っぽいということが、リサイクルを続けられる条件なのです。うん、生物のデザインは完璧なシステムだよね。
最後に環境問題。本書では「時間環境」という考え方で環境問題を捉えているよ。
物理的な絶対時間は変わらないと思われているけれども、我々はエネルギーを使って時間のテンポを加速させているのだと。
地球温暖化も資源エネルギーの枯渇も、元はといえば、じゃんじゃん石油を燃やして時間を速めているのが原因です。ということ。時間はコントロールできるもの。遅くすることも速くすることもできるわけ。そう、考えるといろいろと解決策があるようにも思えてくる。
う〜ん、ナマコの時間で生きるのも悪くないかなぁ〜。
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