風の歌を聴け/村上春樹
『風の歌を聴け (講談社文庫)』を読んだよ。初、村上春樹。
思わず、“初”って書いたけど、そうじゃなかった。以前、『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』を読んでいたよ。その時の村上春樹の印象は「非現実的なことを言う」という感じ。河合隼雄が科学者ならば、村上春樹は文学者。対比すれば、そういう印象になったのは当然の結果かも。
でも、なんとなく気になる村上春樹。ということで、図書館で借りるタイミングの狭間で、デビュー作を借りてみたわけ。
そうそう、久しぶりの小説。小説って読むリズムに乗れるか乗れないかで、面白さがだいぶ違うよね。だから、アッシの場合は、恐る恐る読み始める。で、結局はスイスイ読めて気持ちがよかったよ。
物語の内容。
<僕>が主人公。鼠という名の友人、レコード店に勤める女友達。そして、溜まり場のようなジェイズ・バー。
<僕>は、夏休みで帰省中。場所は海に近い港町。最後は大学に戻るので、まさにひと夏の経験を描いたもの。
でも、物語として具体的にどうだったかというと、スゥ〜っと流れていく感じ。ヘンな理屈は抜きにして。あと味も悪くない。
小説なのでストーリーは書かないけど、アッシの気に入ったフレーズを紹介。
鼠が<僕>に大学を止めたことを告白するシーンでの鼠のセリフ。
「さあね、うんざりしたからだろ?でもね、俺は俺なりに頑張ったよ。自分でも信じられないくらいにさ。自分と同じくらいに他人のことも考えたし、おかげでお巡りにも殴られた。だけどさ、時が来ればみんな自分の持ち場に結局は戻っていく。俺だけは戻る場所がなかったんだ。椅子取りゲームみたいなもんだよ。」
青春の頃は、そんなことを考えがち。
嘘について。
嘘をつくのはひどく嫌なことだ。嘘と沈黙は現代の人間社会にはびこる二つの巨大な罪だと言ってもよい。実際僕たちはよく嘘をつき、しょっちゅう黙り込んでしまう。
しかし、もし僕たちが年中しゃべり続け、それも真実しかしゃべらないとしたら、真実の価値など失くなってしまうのかもしれない。
うん、これは論理的。
それにしても、<僕>。ビールの飲み過ぎと飲酒運転しているのではないかと気になります〜。
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