大学改革 その先を読む/寺崎昌男
『大学改革 その先を読む―立教大学「大学教育開発・支援センター」連続セミナー講演記録』を読んだよ。やっぱり、歴史を知ることは重要だ。
研修での推奨図書。課題図書ではないので、無理して読むことはないのだけれど、今回の課題図書には、現代日本の大学改革について、具体的に書かれた本がなかったように思ったので、念の為に読むことに。
筆者の寺崎氏は、業界の本を探すと必ず名前が出てくる感じ。専門は教育学だからね。立教大学、東京大学、桜美林大学と歴任しており、本書は、筆者が立教大学に戻った後の2005年に、「大学問題連続セミナー」という講演会を開いた際の全記録を収録したもの。この講演は全五回に渡り、「大学改革」、「学士課程教育と大学院教育」、「教員と職員」、「カリキュラムと授業」、「私学の課題、立教の課題」と興味深い内容ばかりで、学外者も含めて、毎回100名以上が参加したとか。
さて、本書ではこの講演の内容をどう表現しているか。
第1講では、130年の大学の歴史をついて。そう、過去があるから今がある訳で、歴史を確認することは意義深い。
第2講では、戦後の大学改革が高度経済成長に如何に貢献したかについても言及しているよ。
第3講では、カリキュラムには二種類のカリキュラムがあると言っているよ。それは顕在的なカリキュラムと隠れたカリキュラム。具体的にはどういうものか。
時間割にも出てこない、正課外かといえばそれだけでもないという、私たちの目には見えない部分です。その大学の持っている校風や雰囲気、その大学で知らず知らずのうちに教え込まれる秩序の意識などを指します。ということ。しかも、大学を支配しているのは、この隠れたカリキュラムなのではないかというアメリカの学者もいるとか。ただ、どちらも無くてはならないもので、重なり合って、大学教育が成り立っているような気がするのは確かだよね。
第4講では、教員と職員について。昔から両者は車の両輪であるという例えがあるけれども、では両輪を繋ぐ車軸は何か?その車軸を動かすエンジンのパワーはどうあったらいいかという議論が必要だと筆者。そう、それって大学とは何かっていう議論だよね。だからこそ、大学リテラシーという表現が出てくるんだよね。職員だけでなく、教員にも大学リテラシーが必要だし。
最後に、蘊蓄。慶応義塾大学の「義」にはどんな意味があるか。そう、まさに今の大学が置かれている立場を表現しているんだよね。しかも、私学なのに「義」を使う。私学でも求められていることなんだよね。
大学改革 その先を読む―立教大学「大学教育開発・支援センター」連続セミナー講演記録 | |
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