イノベーション創発論/佐藤剛

イノベーション創発論―セイコーエプソン・機器デザインセンターの挑戦』を読んだよ。課題図書シリーズ第4弾。

課題図書シリーズ第3弾の『組織自律力』と同じ筆者。研修の講師にも登場。面白い人だったよ。

基本的にはイノベーションの本。組織の中でイノベーションを起こすにはどうしたらよいかを考えるっていう感じかな。あと、副題に「セイコーエプソン・機器デザインセンターの挑戦」とあるように、筆者が研修などで深く関わったセイコーエプソンの事例が中心にはなっているけど。

では、イノベーションはどうしたら起こせるのか。
まずは、人の問題。与えられた職務を忠実に実行するだけでは、新しいことは何も生まれない。そこで、

自由な研究を保障する、あるいは義務付けるという方法がある。仕事のやる気をかきたてるのは仕事自体であり、仕事での経験がその人を育てることが知られている。
と筆者。
さらに、そのための環境整備。
イノベーションを起こすという意図的表現よりも、イノベーションを起きやすくする、そのための環境を整備するという意味でイノベーションを誘発するというのが適切な表現であろう。
と言い、例として、やる気の醸成とか教育機会の提供などを上げているよ。
そう、イノベーションをコントロールすることは無理なわけで、ただ、それを誘発する仕掛けはいろいろと考えられるよね。
もうひとつは、準備。外的な変化に対応するためにデータベースを構築すること。これは、一度作ってしまったら終わりではなく、組織内外からの刺激に対して敏感に反応できるように活性化しておかなければならないとも、言っているよ。

本書の後半は、セイコーエプソンでの事例。筆者が社員の何人かにインタビューを行う。そこで社員が語ったことは、会社や上司だって対する愚痴ではなく、高次からの視点に立った発言が多かったと。

日々の仕事上の不満ばかりに集中していたら、本来の創造的仕事に振り向けられる認知的資源は確実に減少する。限定された人間の認知能力を何に使うかが、その人間が次の成長のためのステップを踏むことができるかどうかを左右するといえる。
この考え方はアッシ的には好き。たまには愚痴も必要だけど、次のステップには繋がらないよね。

というところで、結論的なことを言えば、イノベーションはやっぱり人の問題に行き着いてしまう。意識変革が必要だし、そうするための訓練とか。そして、マネジメントも。一人ひとりが話すこと、聞くことという基本動作を忠実に繰り返すことがその第一歩なのかもしれないね。

イノベーション創発論―セイコーエプソン・機器デザインセンターの挑戦
イノベーション創発論―セイコーエプソン・機器デザインセンターの挑戦佐藤 剛

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