偽善エネルギー/武田邦彦

偽善エネルギー (幻冬舎新書)』を読んだよ。エネルギー無くして生きられない人類。

ご存知、武田邦彦先生の「偽善」シリーズ?第2弾。前作はエコをテーマにどちらかというと生活一般の話題が中心だったけど、今回はずばりエネルギー問題。
スーパーのレジ袋を削減しても、割り箸をやめてマイ箸にしても、電気をこまめに消しても、世界中が使うエネルギーに比べたら、微々たるもの。だから、エコを語るよりエネルギーを語るべしという本書の趣旨はよ〜くわかる。

第1章は現状のエネルギー状況を整理する。
まずは石油の問題。筆者の見解としては、完全に無くなることはないだろうと。これには、需要と供給の経済学的政治的な視点もあるんだけど。つまりは、たくさんあると言えば安くたたかれ、足りないと言えば価格が高騰し売れなくなる。結局、売る側からしたら、あるともないとも言わない方がいいってことになるわけ。
科学的には、「使いやすい石油」は使われていくけれども、「使いにくい石油」をどう使いこなしていくかという問題も。こういう技術的な課題って、将来的には解決されていくんだろうけれど。

第2章は食糧と温暖化の問題。特に食糧と石油との密接な関係が面白いよ。
世界の穀類の作付面積が約40年前から増減がなく、それなのに穀類の生産高は2.5倍になっている。これは何を意味するのか。

原因は、石油を何倍も使って農業をしてきたからです。たとえば、日本でお米を作るときの石油の消費量は約5倍になっています。トラクターを動かし、農薬を撒き、そして化学肥料を使うようになったからに他なりません。環境運動家の中には、農薬や化学肥料を使わない方がよいと言う人もいます。確かにその通りですが、もし農薬や化学肥料を使わずに今まできたら、世界で相当の人が餓死したことが予想されます。
これは何を意味するか。そう、石油が無くなると餓死する。日本の穀類自給率は25%だから…。

第3章は日本のエネルギー問題。石炭が復活する可能性なども示唆しているのは新たな視点。そう、石油より石炭の方がまだまだあるみたい。あと、「使いにくい石油」をいかに使いやすくしていくかという点も。
もうひとつは原子力発電。チェルノブイリのようなボロボロの原発は使わず、「軽水炉」を使えば安全であり、さらには石油、石炭を焚く火力発電所よりも安全であると。『原発を考える50話』とはニュアンスが違うような…。さらには原発の問題は人災であるとし、「秘密主義」と「専門主義」を問題にしているよ。あと耐震の問題も大きいかも。これも人災なんだけど。

結局、「エントロピー増大の原理」がある限り、そして、人間の向上心がある限り(まさに本能なんだろうけど。脳科学者に言わせると脳の喜びがある限り)、エネルギーが減ることはないんだろうね。本書に書いてあるけれども、戦前の生活に戻ることなんて、誰も嫌だろうから。
地球の歴史を考えたら、人間のインパクトなんてごくちっぽけなもの。やっぱり、そこに結論が落ち着くなぁ〜。

偽善エネルギー (幻冬舎新書)
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おすすめ平均 star
star海水の熱容量は大きい
starそれでも、本書を評価します
star読み物としては面白いけど・・・

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