バカヤロー経済学/竹内薫

バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5)』を読んだよ。日本の政治にバカヤローって言いたい。

サイエンス・ライターの竹内薫氏が小学生になったつもりで、某経済学者(本書では“先生”という名で登場)からゼロから経済学を学ぶ本。
ただ、小学生にはかなり高度な内容だし、発刊当時の政治の裏側まで、ある程度社会情勢を知っていることを前提条件に、その理論的・政治的な意味を勉強するといった感じ。

まずはガイダンス。いきなりNo Free Lunchというキーワードが登場。直訳すると「ただ飯(昼食)はない」。世の中にそんなおいしい話はないことをし、自覚すべし。十分分かっているはずなんだけど、どうもふとした隙に抜け落ちる人が多いみたい。
もうひとつのキーワードはインセンティブ。こちらの方が経済学的な意味合いは強いよね。本書に登場する経済活動をインセンティブの視点から見ると理解しやすいし。

さて、経済学の基礎。
まずは「合成の誤謬」。

節約っていうのは、家計の中では正しい。でも全員がそれをやったら、経済活動が活発化しない。<中略>だからこそ景気というのは、守りを重視する家計よりも攻めを重視する企業に頼ったほうが、効果が期待できるんですよ。
つい、自分だけの立場を考えるとミクロ経済重視になるよなぁ〜。でも、民主党はこれで政権を獲得したような気がするんだけど。

消費税の仕組みも分かりやすく解説。取り引き上で前の人の売り上げがきちんとわかるような賢い仕組みになっていて、ウソの申告ができないようになっているんだね。人の税金にかこつけてウソをつくと、流通のシステムから排除されてしまうっていうわけ。互いに監視役になるという巧妙なシステム…。

“先生”は年金問題にも切り込む。
竹内氏が、年金のような社会保険料と税金の違うを問う。確かに同じようなものに思えるけど。先生は、アメリカの例を上げて、結局は税金とあまり変わらないものだと回答。

本当は税務署が取ればいいんだよね。アメリカじゃ、社会保険料を払わないと税務署に財産没収されるんですよ。国税の徴収法とまったく同じ考え方なんです。
同じような仕事なんだから、同じ役所がやればいい。まったくシンプルで合理的。でも、日本ではそれができない。社会保険庁の職員だけでなく、厚生労働省が反対する。天下り先がなくなるから…。役人天国、ニッポン。

最後は政治の話。政治主導の話は、民主党から始まったような印象だけど、実は安倍首相の時から始まっていたと。でも、官僚を叩いていたら、社会保険庁年金記録の杜撰さを暴露するという自爆テロ。結局、政治家が責任を取らされた格好だったのか…。小泉さんの郵政改革は選挙で民意を問うという形でうまくいったけど、安倍さんのときに逆襲されたのかもね。

民主党政権が発足して半年以上経つけれども、結局何も変わっていないような。日本の政治家、官僚の体質はそうそう変わるものではないのだろうね。本書に書いてあるけど、いっそ大連立を実現して、そこからもう一度分かれた方がいいのかも。あ〜、それでも官僚は変わらないか…。政治、官僚、税金、金融、財政etc、世の中の複雑な仕組み、いったい誰が全てを理解しているんだろうなぁ〜。

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