脳と日本人/松岡正剛,茂木健一郎
『脳と日本人』を読んだよ。小難しい日本人文化論。
茂木さんと松岡正剛氏の対談集。タイトルには「脳」とあるけれども、それほど脳科学が出てくるわけでもなく、どちらかというと「日本人論」。「脳」の話は、茂木さんの話の中で、心脳問題とかクオリアとか出てくる程度。
全体的に小難しい会話が延々と展開されるんだけど、アッシが理解できた会話をいくつか紹介。
まずは松岡氏の発言。茂木さんが現代科学の見通しの悪さについて語った回答として、こう答える。
物理法則にする前に、世界観が必要なんですよ。例として、プランクが量子の法則について気が付いたときに、プランクは「それをどのような世界観にするかというほうが難問だったし、ずっと重要だ」と語ったという例をあげる。そう、世界観がないと、見通しの悪さを突き抜けることができないんだよね。
さらに、茂木さんがアカデミシャンという言葉の含意について、
たんに文献学、ないしは学問の業績を文脈に当てはめるというある種の訓練を受けているにすぎない。そして、トレーニングに従い、そのルールに従ってやっているだけの話なのですね。と言い、アカデミシャンの自己批判の視点のなさに苛立ちを隠さない。そして、松岡氏をアカデミシャンではなく、スタンド・アローンである言う。それに対し、松岡氏。
まあ、ぼくもそうかもしれないけど、あなたも、そして八百屋さんや職人さんたちもみんなスタンド・アローンといえるのではないでしょうかね。と語る。阿部謹也先生の「学問とは何か」に繋がる結論が導かれているよね。
一神教と多神教の違いについての見解も面白い。
砂漠のような過酷な環境条件で生きていくのは、ちょっとした判断ミスで命取りになる。だから、絶対唯一的なリーダーが決めてくれ、それでだめなら死んでもいいということになる。日本の環境は二者択一を迫られる状況ではない。環境がまちまちだから、衆議になる。意思決定に時間がかかる。ゆっくり思考する。必要なぶんだけ待つ。時間が止まる。座禅も生まれる。茂木さんは、
人間の思考というものは、自然環境の果実という側面がある。とまとめているよ。
茂木さんと松岡氏の意見の対立もところどころに出てくるよ。
茂木さんは科学者として普遍性の追及は完全に捨て切れない。それに対し、松岡氏はそんなことはどうでもよいのではという立場。対談だから、喧嘩にはならないけど、実際の会話はどうだったんだろうと想像する。
読後感としては、結局なんだったんだという印象。何が言いたかったのか、何を話していたのか、記憶にない…。アッシの頭の悪さゆえなのか。それにしても、ちょっとテーマが絞りきりれていないからなのではないか。そんな感じ。
でも、那須の森の写真がところどころに挿入され、そういう意味で小難しい話の合間にリゾート気分に浸れるのはちょっとホッとしました〜。
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