知的創造のヒント/外山滋比古

『知的創造のヒント』を読んだよ。『思考の整理学』と重複する内容もあるけど。

あとがきにもあるけれども、“考える”とはどういうことかを考えたこともない人が多数。だから、“考える”とは何か、“考える”ことによってどのように知的創造を生み出すか、などのヒントを与えてくれるのが本書。
とは、いっても冒頭に書いたように、『思考の整理学』と重複する内容もあるよ。但し、繰り返して説明されることは、自分の頭の中にも入っていくし、それはそれでいいことだと思うよ。

知的創造をする為に大切なこと。
全体を通して筆者が言っているのは、あまり真剣にならないこと、一点のみを見つめるな、忘れることも大切、休憩は十分に取れ、脱線も大事、権威に引き込まれるな、など、精神の自由を強調しているよ。
精神の自由について、

精神を自由にするには、肉体の一部を拘束して、いくらか不自由にする方がいいらしい。中国の宋時代の詩人、欧陽修が三上、馬上・枕上・厠上を妙案の浮ぶ場所としてすぐれていると考えたのも、それぞれ、完全に自由にならない立場にあるからだといえそうである。
と紹介しているよ。だから、“ながら族”は精神の自由にとってはよいことみたい。集中しすぎると他が疎かになって、とんだ失敗をやらかしたりするから。

セレンディピティーの話題も。ただ、アッシの考えていたセレンディピティーとはちと違うかも。アッシのセレンディピティーは茂木さん譲り。だから、ある問題を常日頃から真剣に考えていると、ふと気が抜けるときに偶然にひらめきがあるという感じ。
ところが本書では、この「ある問題を常日頃から真剣に考えている」という前提条件が説明されていないような。確かに、この前提条件にある時に、三上でふと精神が自由になり、偶然に考えが浮ぶということはあるんだろうけど。

「空気」についても触れているよ。

人間を訓練するのに、やかましい規則を設けて、それに合致させようとするのはあまり賢明でない。規則の網の目からいくらでも抜け道ができるからである。ある空気をつくっておくと、いかなる場合でもその枠から外れた行動はしにくくなる。
といい、例として、校風といったものによる薫陶などを上げているよ。お〜、「空気」の新しい事例だ〜。

エディターシップの考え方も面白い。
同じ日本人なら、同じような新聞を読み、同じようなテレビ番組を見て、同じような教育を受けてきている。それなのに、個人の考え方とか感じ方は大きく違っている。よくよく考えてみるとこれは不思議。このことを筆者は人生のエディターシップといい、要は編集の仕方が違うからだと説明しているよ。

われわれは毎日、自分の一日という雑誌を編集しているようなものである。部分のひとつひとつは外部から与えられたり、押しつけられたり、他人のものを借りたりしているのだが、それに順序をつけて、一日の中に収めるエディターシップにおいては独創的であり、個性的でありうる。いかなる人も他人とまったく同じ一日を過ごすことはできない。
なるほどね。意識していないけど、人間って結構創造的な活動をしているんだね。

脳科学的でもあり、ノウハウ本でもあり、学術指南書でもあり、単なるエッセイでもあり、と薄いながらも、中身のギッシリ詰まった内容だよ。その割りにはさらっと読めるとこともよい。そうそう、三上でも読めるくらいだから、創造的なのかも〜。

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