虫捕る子だけが生き残る
『虫捕る子だけが生き残る』を読んだよ。虫好きのオジサンたちは異常に元気だ。
いつもの養老先生、最近アッシ的に注目の池田清彦先生、そして『ファーブル昆虫記』などを翻訳した奥本大三郎の3氏による対談集。
対談のテーマは、本書のタイトル通り「虫捕り」。いまどき、虫捕りなんてって思うけど、これが虫捕り好きの3人に掛かれば、世の中のすべてが虫捕りに繋がっていくような話になる。そして、そういう会話が本を読んでいるアッシに虫捕りの楽しさを思い出させてくれるような…。そんな感じの対談ってわけ。
では、どういう会話か?まずは、概念化の話。
自然のない世界ではあらゆるものが概念化されてしまうという奥本氏の発言から始まって、現代人は感覚でものを捉える前に概念化のフィルターを掛けているのだという議論。そう、まさに頭でっかち。何事にもすぐに脳で考えてしまう。
だから、大人は既成概念の固まり。子供の頃は写生にしても観察の絵にしても、素直なよい絵が描けるのに、大人になるとどこかの本とか写真で見たことがあるような絵になってしまうのは、この既成概念のせいだと。『できそこないの男たち』にも書かれていた「見たものしか描けない」って、まさにこのことだったんだね。感覚も概念も両方とも必要なんだよね。
さらに、脳の機能は回転であるという考え方。感覚から得た情報を脳に入力して、脳が解釈して、身体で出力する。これをグルグル廻すわけ。いわゆるカンを磨くにはこのグルグルサイクルを繰り返して、脳をブンブン回すことが必要だと、養老先生。
この脳をブンブン回すのに、最適なのが虫捕り。
虫を見て、「いた!」と思ったら、筋肉を動かして、捕まえて、自分で調べて、標本を作って、考えて、また虫を見て…という具合に、インプットとアウトプットが連鎖しながらくるくる回り続ける。やっと、虫捕りに繋がってきた〜。
養老先生の「ああすれば、こうなる」理論も登場。
人間が自然をコントロールしようとしてダメになって、さらにコントロールしようとしてもっと悪くなるパターンはどこでも見受けられるよね。それと同じ。養老先生曰く
自然界を守るためには、もう人間を減らすしかないですよ。と、過激発言。多分、養老先生は過激だとは思っていないんだろうけど。
さて、アッシのこの書き振りでは、虫の話はほとんど出ていないのでは?と思われるかもしれないけど、実はほとんどが虫の話ばかり。よくぞここまで虫のことを知っているものだと感心しきり。オジサンたちの虫に対する情熱には敬服するばかりであります〜。
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