唯脳論

唯脳論』を読んだよ。養老先生の原点?

単行本が1989年の出版だから、養老先生がこれだけメディアに出始める前のもの。その後に『解剖学教室へようこそ』とか『考えるヒト』とかを上梓しているから、そういう意味で養老論の原点を位置づけられる本のような。
アッシ的にも以前から気になる本だったけれども、踏ん切りがつかず。ちょっと敷居が高いかなぁ〜との思いもあったから。

じゃ、読んでみてどうだったか。前半は比較的分かりやすい話が続く。情報の「送り手」と「受け手」はなぜ分かり合えないのかとかいった『バカの壁』風の話。それと唯脳論的に言うと、

脳は一般に他の脳を包含する場合に、相手を理解する。われわれがサルをよく理解するのは、われわれの脳の中に、ともあれサルの脳があるからである。
となるよ。うん、まさに脳はそういうものだ。それこそが「バカの壁」なんだなぁ〜。

「脳のことしか知らない」とも言う。背中がかゆいといっても、それは背中のことを知っているわけではなく、脳についてなにかを知っているだけなのだと。まさに脳様様とはこのこと。しかも、なぜ背中のことについて知っているような気になるのかと言うと、それは言語の仕業だとも。

「意識」の存在についても、鋭い分析。要は、脳が脳を維持拡大されるための行為が、結果的に意識になっているのだという。まさに、トリック。

中盤は、構造と機能、視覚系と聴覚系などがキーワード。段々と話が難しくなってくる。哲学的っていうか。結論的には、これらが言語の成立に繋がっていくんだけど。

そして、脳の人間への侵略は続く。それは「身体性の排除」。

個人としてのヒトは死すべきものであり、それを知るものは脳である。だからこそ脳は、統御可能性を集約して社会を作り出す。個人は滅びても、脳化=社会は滅びないですむからである。
げに恐ろしき…。地球は「脳の惑星」か…。
唯脳論 (ちくま学芸文庫)
唯脳論 (ちくま学芸文庫)養老 孟司

筑摩書房 1998-10
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