この国のかたち〈1(1986~1987)〉
『この国のかたち〈1(1986~1987)〉』を読んだよ。司馬遼太郎は初めて。
『日本を教育した人々』で司馬遼太郎に興味を持ち、ひとまず読みやすそうなものとしてこの1冊。
読んでみて、驚くことがたくさん。まずは明治維新は革命思想としては貧弱だと。
スローガンは尊王攘夷でしかないのである。外圧に対するいわば悲鳴のようなもので、フランス革命のように、人類のすべてに通ずる理想のようなものはない。…と手厳しい。しかも、そのスローガンはすぐに破棄し開国したわけだし。ビックリだよね。
そして、明治維新から終戦までの日本は、日本ではないという論旨。戦後は江戸時代の日本に戻ったのだと言っているよ。大日本帝国憲法の下にありながら、超法規的な行動を許していた日本だから。
昭和初期の日本というのは、統一的な意志決定能力をもった国家であったとは思われない。当時の参謀本部には統帥権についての本があり、参謀本部の将校だけは憲法外に置かれているのだという私的合意を取り交わしていたという。
すさまじい断定というのほかない。筆者のいうところの異胎というしかないよね。
筆者はアメリカ人の学者に「日本史には、英雄がいませんね」と言われたという。日本史的には、天下は「虚」であり、私物ではない公のものなのだという考え方があるという。織田信長といえども、天下は公。
言いかえれば天下という「虚」なる主人のために番頭・支配人をつとめます、ということであり、もしそうでなければ、信長の配下といえども信長に愛想尽かししたにちがいない。今で言うと「公=世間」のような気がするね。
そう、やっぱり世間論に行き着いた感じ。「虚」が天下だから、何でも有りの世界。世間様のせいにして、知らない間に自分を正当化できる社会。なんだか不思議の国ニッポンだなぁ〜。
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