脳のからくり

『脳のからくり』を読んだよ。脳科学は、医学でもなく、物理学でもなく、化学でもなく、ましては哲学でもない。

サイエンスライター竹内薫氏が、脳の基本をまとめたもの。あとがきにもあるように、筆者自らが勉強して書いたものなので、非常に分かりやすく書かれているよ。理解しやすいように例え話もふんだんに盛り込まれているし。

前半はどちらかというと医学系。生体としての脳の構造とか。例えば、脳のある生物の中でも人間が特に発達している前頭前野がおでこのあたりにあって、これが機能しないと、認知症症状になるとか。いわゆるゲーム脳は、脳的には認知症と同じ現象なのだとか。

そして、視覚で捉えた画像を脳がどう処理するかの問題。これは、人間が見たものは真実を伝えていないことがあることを明確にすることに繋がっていくよ。
そう、人間は真実を見ているのではないんだ。自分が見ているものと他人が見ているものが違うかもしれない。自分は赤だと思っていても、他の人は緑に見えているのかもしれない。これってすごく不思議な感覚だよね。

脳の神経細胞ニューロン」が出てきて、ニューロンを繋ぐシナプスの話へと続く。繋ぐといえば、ネットワーク。脳の中はニューロンのネットワークで構成されているんだよね。そこへ「意識」の話が登場するよ。

脳が物質からできていて、その神経ネットワークから意識が生まれるのであれば、どんなネットワークにも多かれ少なかれ意識が存在する?
と筆者。疑問文にはしているけれども、これは大胆な仮説。意識は「ネットワーク上のエネルギーの相互作用」が原因だとも。事実、チャーマースという哲学者は「サーモスタットにも意識がある」といっているらしいよ。

さらに、ロボトミー手術、失語症アルツハイマー認知症と、脳が壊れる話が続き、最後に「クオリア」が登場する。
ここでは、ペンローズの量子脳が紹介されているよ。これは、脳の中では量子力学の波束の収縮という現象が起きているのだという仮説なんだけど、ここで量子力学が出てくるとはなぁ〜。驚き過ぎるよ〜。

本書の最後にやっと茂木さんの一稿が登場。クオリアについて、また新たな見方を提供してくれているよ。

クオリアは、それを実際に体験しなければ類推が利かないものであるからこそ、クオリアを感じてしまった人と、まだ感じていない人のあいだには断絶があります。その断絶を乗り越えようとして、私たちはコミュニケーションを試みるのかもしれません。
だからこそ、新しいクオリアとの出会いは、人を雄弁にするのでしょう。
そうそう、数値で表せるものは数値で示せばよい訳でもないよね。旅行の記録は写真を見せればよいって訳にもいかないよね。確かに、クオリアを伝えたくて、コミュニケーションしているね。納得〜。
脳のからくり (新潮文庫)
脳のからくり (新潮文庫)竹内 薫

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