偽善エコロジー

『偽善エコロジー』を読んだよ。今、環境問題って話題になりやすいのはどうしてだろう。

幾つかの環境問題に関する本を読んでいるけれども、本書はどちらかというと生活に即した形で話題提供、っていうか筆者なりの検証をまとめたもの。

分かりやすい話から入ると、スーパーのレジ袋のこと。もともとレジ袋は、石油の原料としては、使われずに燃やされていた成分を原料としているとのこと。そして、レジ袋が無くなると、結局、石油製品でエコバックを作ることになり、同様に石油を原料として有料の専用ゴミ袋が売られることになる。意味があるのかと筆者。
割り箸にしても同じ観点。元々割り箸は端材を使っているわけだから、割り箸を作らなくなると、結局は端材というゴミが出る。さらには日本の森林利用の衰退化に繋がるという。

そして、地球温暖化の話。『ほんとうの環境問題』でも出てくる話だけど、京都議定書をきちんと守ろうとしているのは日本だけだと。さらに、日本だけが頑張って、京都議定書の約束6%を削減したとしても、世界全体からすれば、0.3%削減されるだけに過ぎないという。確かに計算上はそうなる。しかも、0.3%となるとほとんど誤差の範囲になるよね。子の為に、大量の税金を投与して、京都議定書を守るものなのかどうか。日本だけがひとり浮いているのだとしたら。なんだか戦前の正義の為に突っ走る日本のイメージがこれと重ね合わされるんだけど…。

マスメディアに対する批判も。マスメディアは国民に警告を発しなければならないという使命感を持っているのでは?それが、記者の根拠のない心配事を裏付けるための記事になってしまうのでは?と筆者。
確かに、マスメディアの張るキャンペーンはその根底に何があるのか…という疑問を持った方がいいのかもしれないね。

ダイオキシンの問題も。ここでは事例が面白い。それは「焼き鳥」。焼き鳥はプラスチックと同じ高分子。だから、焼けば必ずダイオキシンが発生する。それでも焼き鳥屋のオヤジは死んでいない…。囲炉裏とか炉端焼きも。

ここまでの話で一旦筆者の総括。

我々の科学は、どれが毒物、どれが栄養などとはっきり分けられるまでには発達していません。むしろ問題は、新しい科学の力で作られるものの中で、もともと自然界になかったものや、自然界とは隔絶して多い量で接するもののほうが危険なのです。
この論理から、放射線より蛍光灯、ダイオキシンより化粧品が危険であるという。

リサイクルにしても、自治体はヘンな処理の仕方をしているよう。キログラム405円の税金を使ってペットボトルを回収し、40〜50円で中国に売っているという。なんだかヘンだなぁ〜。
で、筆者の提案は、ゴミの分別は2種類でよいと。金属とそれ以外。金属は業者が種類毎に分けることは容易。それ以外は燃やしてしまうのが一番だと。最近の焼却設備は高性能なものになっているんだろうなぁ〜。

ここまでの話で、冒頭の疑問に戻る。昔は環境問題といったら公害しかなかったけど、今の環境問題は当時の公害とは視点が違うよね。生活者の立場からモノを考えないといけないのが今の環境問題。どう捨てるかを考えるより前に、どう生活するかを生活者が考えていかなければならないんだろうね。

偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書 (た-5-1))
偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書 (た-5-1))武田 邦彦

幻冬舎 2008-05
売り上げランキング : 232

おすすめ平均 star
starひとつの物の見方として面白い
star環境問題よりも教育問題の深刻さを思い知る本
star私は環境問題について深く考えることができた

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ