電車の運転

『電車の運転』を読んだよ。簡単そうに見えるけど…。

2000年にJRを退職するまで、42年間運転士を務めた宇田賢吉氏が筆者。本書は電車の運転に関するありとあらゆる情報を盛り込んだ本。電車っていうくらいだから、電気の知識も盛り込まれているよ。

まずは鉄道の特徴から。
19世紀に鉄道が誕生し普及し、20世紀に自動車が誕生。これが逆だったら、両者の長所を生かせたのに…と筆者。
自動車のない時代に全国にローカル線を建設したけど、結局はその後自動車の普及によって廃線に追い込まれている。確かに誕生が逆ならば、無駄なく住み分けが出来たかもね。

さて、いよいよ電車を発信させる。電車には変速機がないから、モータの制御が必要だったり、直流・交流などの電気的な話が続く。
そして、マスコン。ノッチ操作の意味は、自動車のアクセルとは違う。どこまで加速するかを指示するものだと。よく考えてみれば、そうだ。変速機がないんだから、加速は一定なはず。なるほど。

一定速度まで加速すると、後は惰行。走行中の注意は制限速度。これもかなり厳しい制限があるよう。特に曲線とか勾配とか分岐器とか。
この他にも、変電所の容量制限の為に、2列車が同時に全力運転するのを制限するとか。

駅に近づくとブレーキ。電車の運転は加速や惰行はマスコンを一定にするだけの操作だけど、ブレーキは運転士の腕の見せ所。舟漕ぎブレーキを避けたり、停止位置にピタリと止めたり、滑走をしないようにしたり。

線路と架線のことも。架線は直流、交流によって、設備が違うし。その他、枕木、レール、ホームetc。

閉塞の考え方に出てきた言葉が面白いよ。

閉塞区間にいる列車の運転士は他の列車との遭遇を考える必要がなく、極論をいえば、前方注視の必要がない。現実に曲線のトンネルでは見通しはゼロに等しく、運転士には前方の様子がまったくわからない。前方注視は閉塞を保障する信号機の確認のほか踏切などでの不測の事態に備えることと、停車や発車の操作を行うためである。
これは、道路交通では考えられないよね。それだけ、閉塞という考え方を徹底しているんだろうね。
前部標識(前灯)についても、考え方は同じ。
前灯は列車の前頭を示す標識であり、運転士が前方を見るための照明ではない。
と。徹底している…。

ここまで知ると、電車の運転は自動車とは全く違うことが分かるよね。操作の問題ではなく、システム問題。大量、高速輸送の担い手としての使命は厳しいってことなんだね。

電車に乗ったら、気になることが増えそうです〜。

電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)
電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)宇田 賢吉

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