ソウルの練習問題/関川夏央
『新装版ソウルの練習問題 (集英社文庫)』を読んだよ。近くて遠い国は今でも。
1980年台の前半、筆者の関川夏央が韓国を旅し、そこで感じたこと、出会った人々を通して、当時の韓国をマスコミではない視点から伝えたもの。当時、関川氏の年齢は30歳代前半だったのだろうと思う。日本と韓国は、今のように旅行の自由度は低く、団体旅行がほとんどだったみたい。そこへ単身乗り込んでいく関川青年というシチュエーション。
で、その韓国はどうだったのか。
「孤独」という言葉がある。バベリズム、つまり言語的意思疎通不能によって生じる不安と混乱と、結果として一旅行者が異郷で味わうすさまじいまでの孤独感を味わいたいならば、ぼくはためらうことなく、韓国の旅をすすめる。と。そう、キーワードは「孤独」。同じ東アジア圏で、且つ隣国でありながら、こういう境地に至ったのは「ハングル」という表音文字が一つの原因。顔も形も日本人に似ているのに、そこにあるのはハングルだけの世界。漢字か英語がそこに少しでもあれば、これだけの孤独感はなかったのかもしれないね。
さて、日本と韓国の関係はいつまでも微妙。
八二年の夏だけに日本人が嫌われただけではないのだ。長く濃い影を百年以上にわたって朝鮮半島のうえにおとしつづけてきた心の歪んだ表情の巨人、日本と日本人は嫌われつづけているのだ。と筆者。それでも、だからこそ今韓国に旅行するのだと強気なんだけど、相当に精神には応えているんだろうね。
そして、言語の壁。筆者は韓国語を言語の密林と表現しているよ。
勇敢というよりも、多少の自尊心を持つ青年ならば案内人を伴わずに密林に分け入ろうとするだろう。たとえ結果は悲惨に終わっても、実りなしといえない。言語の森を実感し異文化の刺激のなかで、鏡のなかの自分の姿を冷静に観察できるようになるだろう。と言い、それが異文化体験なのだとも。筆者とスンジャとの関係はまさにこの異文化体験なんだろうなぁ〜。
新装版ソウルの練習問題 (集英社文庫) | |
関川 夏央 集英社 2005-11-18 売り上げランキング : 342255 Amazonで詳しく見る by G-Tools |