春を背負って/笹本稜平
『春を背負って (文春文庫)』を読んだよ。シャクナゲの季節に行ってみたい。
『還るべき場所』に続いて、笹本稜平氏。もっとも、同タイトルの映画「春を背負って」から笹本氏を読み始めたわけなんだけどね。
舞台は奥秩父の主脈上に建つ山小屋「梓小屋」。勿論、架空の山小屋なんだけど、位置的には絶妙。国師岳と甲武信岳の中間地点で、本来なら山小屋か避難小屋でも欲しい場所だからね。映画では監督の意向で、北アルプスに設定が変わってしまったのが残念…。
で、物語はこの山小屋を営む長嶺亨という青年を中心に描かれているんだけれども、元々は連作短編だったため、それぞれの話にもう一人の主人公がいる感じ。そして、冒頭の二話にはその後の亨に影響を与える二 人が登場する設定になっているというわけ。
全体的なテーマは「生きる」ということであったり、「夢」であったり。どちらも『還るべき場所』にも通じるテーマではあるよね。山という場所はそんなことを考えさせるシチュエーションとしては最適なのかもしれないね。
例えば、亨の父親の夢について、
その夢は彼の心のなかで完結するものだった。他人がどう評価するかなど眼中にはなかっただろう。それは夢というより、生きる喜びの源泉というべきもののはずだった。と。そう、だからこそ、夢ってあった方がいいよね。現実ばかりじゃ、つまらない人生になってしまうから。
もう一つは、山小屋を手伝うゴロさんのセリフ。
「それを手に入れるためには労を厭わな い。むしろそのための苦労そのものが人生の喜びであるようななにかだな―」と夢について語る。このセリフもいいよね。
あ〜、やっぱり山に行きたくなった。甲武信岳って、25年くらい前に行ったきりだしなぁ〜。
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