鉄道会社はややこしい/所澤秀樹

鉄道会社はややこしい (光文社新書)』を読んだよ。ややこしくなるのは必然なのだが…。

いきなりだけど、はしがきに書かれていることが、本書の内容のすべてを物語っているよ。それは、第三セクター青い森鉄道の東青森駅に置かれていたゴミ箱に書かれていた文字「JR貨物青森駅(八戸臨海)」のこと。この種明かしは本書に譲るとして、要は鉄道事業も業務が複雑化して、アウトソーシング化も進んでいるということ。特に、この事例では、東北新幹線の青森までの延伸で影響を受けた在来線が第三セクター化されたわけだからね。

ということで、本書は鉄道会社の協力依存関係及びそれに伴う鉄道の運行がどのように行われているのかを詳細に記述したもの。とにかく、その詳細ぶりが凄い。マニアック以上の細かいレベルまで調査しているし。例えば、○○鉄道○○線上りxxxx列車はどこの会社の所有車両で、他社線へ乗り入れる場合の乗務員はどこどこ駅で交代するとか…。一般原則ならともかく、個別列車まで調べているから驚くほど。

では、具体的にはどんな運行形態があるのか。相互乗り入れの場合、まずは車両の手配。軌間はもちろんのこと、車両の長さ、ドア数などを調整する必要があるよね。都営浅草線相互直通運転をしている京成と京急はその複雑さの代表例。京成はそのために軌間変更したわけだし。東京メトロ日比谷線も似たようなもの。東武と東急の相互直通運転だけど、車両の長さが問題もなったり。

で、車両の使用料はどのように清算されるのか。これはお互いの車両の走行距離を合わせることで調整する。だから、他社車両が他社線だけを走行するなんていう不思議なことも起こるわけ。

もうひとつは、乗務員の貸し借り。通常は自社線は自社の乗務員が乗車するんだけど、これも例外がかなりある。そのパターンも千差万別。その最たるものが「JR貨物」なんだけどね。これについて、以下に引用。

日本最大規模の営業線網を有する鉄道会社が、線路のほとんどを借り物でまかなっているというのも、興味深い話ではあるが、それを可能としたのは、件の「鉄道事業法」にほかならない。
と筆者。「鉄道事業法」の第二種鉄道事業で定義の定義は、JR貨物のために作られたようなものだからとも。

それにしても、複雑な鉄道の運用。いや、これだけ複雑だからこそ、マニアもいるし、鉄道関係の商売も成り立つというわけで、テツ様々ということですな。

鉄道会社はややこしい (光文社新書)
鉄道会社はややこしい (光文社新書)所澤 秀樹

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