どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?
『どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?』を読んだよ。中島義道の本は麻薬のように…。
また、中島義道。氏の作品を図書館で手に取ると、本が「読んでくれ。」と言っているように感じてしまうのは何故だろう。今回もまったく別の本が目的で図書館に行った時につい手にとってしまい、結局借りてしまった。まさに麻薬のよう。中島義道無しでは、生きられない体になったら、どうしよう…。
それはさておき、本書の内容はまったくタイトルの通り。本当に不思議。「どうせ死んでしまうのに」皆は一生懸命に生きようとする。生きていても楽しいことなんて少なくて、嫌なことや苦しいことばかりなのに。不思議…。
死は絶対的不幸。
私は、これまでの人生で幸福を求めなかった。絶対的不幸が存在するかぎり、それはにせものであることを知っていたからである。そして、ただ絶対的不幸だけをじっと見据えて生きてきた。まさに絶対的不幸の自覚が、あらゆる幸福幻想を吹き飛ばしてくれ、世間的な卑小な不幸を蹴散らしてくれ、幸不幸に囚われない生き方に導いてくれ、そして私に真に生きる力を与えてくれることを知っていたからである。人生の不幸を死という絶対的不幸との比較で救われるという。そう考えるとなんと生きるのが楽なことか。それでも幸福を求めないという態度は余程の覚悟で臨まないとね。
では、死とは何か。
それを導くのに、「いま」とは何か、過去とは何かを議論する。さらに「私」とは何かまで。その結論を、
「私」は過去とともに出現するのであるから、過去形を作れないことをもって消滅する。死とは永遠に過去形を作れないことであり、それゆえ、ただその意味でのみ。「私」は消滅するのである。とする。途中、「いま」の定義で、Δtなどの数学的表現が出現し、理解が進むよ。
最後は「仕事」とは何か。
仕事とは、純粋に「気晴らし」であり、「最も重要なことは考えないようにしよう」という黙約の上に成り立っているものなのだから。と筆者。ここでいう「最も重要なこと」というのは本書のタイトルの意味のこと。でも普段はそんなことは考えずに仕事に没頭する。まさに仕事が無ければ、全く退屈な人生だと思う。何とか楽しみを見出そうと仕事をするのだろうけれども、何故か苦痛が付いてまわるのも仕事だよね。
中島義道の本が麻薬なのは、分かったような分からないようなそんな気にさせるからなのかもしれない。でも、理屈があっているし、でも、人生ってそんなものなのかとも思うし。引き続き、この麻薬に溺れてみようか…。
どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫) | |
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