脳のシワ
『脳のシワ』を読んだよ。まるで詩を読むようなリズムの良さが心地よい。
いつもの養老先生のエッセイ集。一話が4頁、しかも一つの文が短めですっきりした文体だから読みやすく、且つ読んでいて心地よい。養老先生の文章は、元々クールでキレがあるんだけど、本書はさらにその特徴が出ている感じだよ。
テーマは様々。でも、脳に絡めての話。
養老先生の得意分野の「死と同居する」では、現代人が死に触れることが少なくなったことから、その重大さを認識しなくなったと指摘しているよ。そして、「死は意識から消滅するのではないか。」と。そう、「死」を意識しながら生きている人は少ないよね。昔の人たちの生活は死に直面しながらの生活だったかもしれないのに。
「男と女の脳」では、結婚は物差しであるという考え方を提示しているよ。男女の関わり方の物差しの一つとして結婚という制度を考えたのであろうと。だけど、結婚が正義だとか道徳の規範であるとかいうこととは違う。あくまでも物差しであり、それには正義も倫理もないと。この物差しの考え方は、結婚に限らず、どの物事にも通用する考え方だよね。これも脳の仕業かも。
「人体の秘密」では、論理とは耳のものであると言っているよ。これはちょっと新しい観点。
目は「パッと見てとる」もので、目に理屈はじつはない。理屈はじゅんじゅんに説くというもので、それは耳が得意なのである。なるほど、確かにそう。視覚はイメージをざっくり捉えるだけ、聴覚は時間に関係してくるから、入ってきた音声を論理的に積み上げる必要があるわけだよね。
ちょっとした時間の隙間を埋めるために、この養老先生の薄手の本を読んだけど、いつもの調子で、全く違和感が無く楽しめました〜。
脳のシワ (新潮文庫) | |
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