点と線/松本清張

点と線』を読んだよ。最後が駆け足?

時刻表ミステリーと言えば、自分的には『準急ながら』なんだけど、一般的に知られているのはこの小説。確かに『点と線』から『準急ながら』を知ったということもあるので、やっぱりこちらが金字塔なんだよね。以前に本書を読んだのは30年以上の前のこと。おおよそのストーリーは分かっていたけど、最後の落ちが駆け足っぽい。前半がかなりゆったりペースだったこともあり、余計にそう感じるのかな…。

そして、本書の特徴は時刻表。旅の道具として必要不可欠なものだけど、今でもあの分厚い時刻表を趣味としている人はたくさんいるんだろうね。数字を読んで、鉄道の運行を想像する。現地の風景をイメージする。さらには推理するとところまで行くんだろうね。そして、その様子を描いた随筆が登場する。その随筆について、

随筆は詩情に溢れ、余人には無味乾燥に見えるあの横組の数字が、いかなる小説よりもおもしろいらしいのです。数字の行間からは、 蜿蜒と尽きぬ旅情の詩が湧き、随想が生まれるらしいのです。
と…。うん、面白いのは事実。そして、その面白さが分かったからこそ、松本清張自身も時刻表を読み解くことによって、この小説を書いたんだろうからね。

そして、もう一つの観点は官庁の汚職絡みという点。実務者レベルの課長補佐が巻き込まれてしまう。本書は昭和32年の作品だけど、平成の後半にも同様な大きな事件があったっけ。世の中は変わっているのに、人の営みは変わっていない。そう、令和になっても、コロナになっても、変わらない…。
あら、『点と線』から、こういう結論に至るとは思わなかったなぁ~。