定本 バブリング創世記/筒井康隆
『定本 バブリング創世記』を読んだよ。たまに読みたくなる。
コロナ禍の読書は積ん読Kindle本をせっせと片付けているんだけど、たまには志向を変えたくなって、今回はAmazon Prime Readingからの選択。おっこれは!という本がたまに出ているわけで、今回はその中からこれ。
筒井康隆の短編集。相変わらずというか、嬉しいほどにというか、まさに奇想天外。普段の感覚では味わえないような体験が読書でできるのが、また楽しいといったところか。
では、その奇想天外ぶりはいかに。
まずは、表題作の「バブリング創世記」。
ドンドンはドンドコの父なり。ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み、ドンドコドン、ドコドンドンとドンタカタを生む。で始まり、あとは終わりまでずっとこの調子が続く。いつ終わるのかと思いつつ、このカタカナを丁寧に読んでしまう自分は何なのか…と疑問を持ちつつも読んでしまう。そして、この日本語の豊かさにも驚くという発見もあり。
同系の作品としては「発明後のパターン」。
「おお。万歳。なが年研究の 甲斐 あってついにロチャニをベラルゴしたぞ。ああ。これで世界中のボリスカロをスペサトレしることができる。やっぱりわしは大天才だ」このカタカナ語が何を意味するかは一瞬は分からない。でも、読み進むうちに分かってくるとこの作品の面白さが味わえるという指向になっている。
最後に「裏小倉」。パロディ短歌集といったところか。例えば、
はれすぎて なつぼけらしく うろたえの こどもほすてす かまをとぐや元歌もすぐにわかるし、通訳もまた楽し。
これらを次々と繰り出せるって、筒井康隆は日本語の魔術師だよね。