彼のオートバイ、彼女の島/片岡義男
『彼のオートバイ、彼女の島』を読んだよ。昭和の香り。
自分が子供の頃、本屋に行くと文庫本のコーナーは片岡義男を本で溢れていたことがあったっけ。そう、角川映画の全盛時代。次から次へと話題作が作られて、本と映画が売れまくっていたんだと思う。そんな中の作品の一つが本書。小説が1977年、映画が1986年。古いといえば古いけど、逆に懐かしさもありといった感じか。
タイトル通り、彼と彼女の物語。もうひとりの主役はオートバイ。カワサキ650とヤマハ250。そして、舞台は長野の別所温泉から始まって、東京に移り、瀬戸内海の島まで。別所温泉は高原の夏。東京は秋から冬。そして、島では夏に戻ってくる。
では、どんなところが昭和的か。
ぼくは髪をリーゼントにしてもみあげを長くのばしているから、風圧で横に流された涙は、もみあげのなかに入りこんでいった。とか、
「髪にポマードつけるの、やめなさいよ」とか。リーゼント!?ポマード!?今の若い人には分からないのではないだろうか…。当時はカッコイイの代名詞だったような。
そして、彼女の描写。
皮のオートバイ・ジャンパーに皮ズボンのライダーが降り立ち、サイド・スタンドを出し、RDを休めさせる。フル・フェースのヘルメットをとったライダーは、両手で髪をときほぐし、空をあおぐ。そして、ぼくを見て、にっこり笑う。こんなうれしい瞬間は、ほかにない。いかにも映像的。これを映画で原田貴和子が演じたらと…想像できるような気がするけど。
最後に島。瀬戸内海の小島が広いと感じた彼。
「まわりが海だから、広いんだ」と、粋なセリフ。オートバイを思う存分走らせる道路がない島なんだけれどもね。
ということで、あとは映画を見てみたいかな。