東京の自然史/貝塚爽平

東京の自然史』を読んだよ。住む場所選びにも。

自然史というタイトルだけれども、もっと狭義の意味ではほとんど地学。タモリもバイブルにしているとかいう噂の本なので、それなりに信頼性も高く、読まれている本なのだと思う。第一版が発行されたのが1964年で、本書は増補第二版。それでも1979年だから、相当に古いのは事実。でも、地学的な時間軸では一瞬以下のことだから、内容的に古くなることはないよね。

では、その自然史とはどのような内容なのか。

最初はその地形。

タクシーの運転手から、東京の地理に通じるコツは、下町では橋を、山の手では坂を覚えることだと聞いたことがある。
東京には川もありそこには谷がある。谷があるということは台地もあり、必然的に坂がある。それが複雑な地形を作り出している。普段に歩く道でもよくよく観察してみると色々な発見がありそうな感じ。坂道を実感する為には、車や電車に乗るるより、自転車とか歩くのが一番だよね。

そして、武蔵野台地玉川上水の位置はその台地の特徴を活かした絶妙のコースだとか、

地下水堆にしても宙水にしても、その地域は浅い井戸で地下水を得ることができるので、古くから集落ができた、という例が多い。上宿は保谷村の発祥地となった古い集落で、寺や鎮守の社がある。所沢市も宙水に依存した集落から発展したという。深井地帯の中での地下水堆や宙水は砂漠のオアシスのような地域だったのである。
とか、人々の暮らしの中心に地形という要因が大きかったというのもよく分かる。

関東ローム層のことも。一般的には富士山の火山灰と思われているけれども、地層的には細かく分類できると。だから、箱根火山とか八ヶ岳とか、さらには御嶽山の火山灰も含まれているとか…。これは驚きの事実。

さらには地球規模の動きも影響している。

けれども、遠い将来の東京を考えるならば、海面の昇降やそれをもたらす気候の変化、あるいは地震や火山活動や地殻変動の原因を追究し、かつ未来における海面変動・気候変化・地震・火山活動・地殻変動などの推移を予知することも決してないがしろにできない問題である。
これらを地層観察とか、ボーリング調査とかで、解明していく道筋がよく分かる。地道だけど、人々が暮らす土台を調べるって、様々な意味で大切なことだよね。