「松本清張」で読む昭和史/原武史

「松本清張」で読む昭和史 (NHK出版新書)』を読んだよ。昭和が終わってもう30年か…。

自分も10代から20代にかけて、松本清張はいくつか読んだ記憶がある。『砂の器』は映画かな。『点と線』はあまりにも有名だけど、当時の自分は鉄道ミステリーとして手に取ったのだと思う。『準急ながら』もその類だったし。それでも、松本清張はそこから先は読む機会がなくなってしまう。読みたいと思いつつなんだけどね。

本書はその松本清張の作品を通して、昭和という時代を顧みるというもの。いや、松本清張が捉えていた昭和の有り様を筆者なりに分析したものといった方が正確かな。
そして、取り上げられるのは3つの小説と2つのノンフィクションの5作品。

まずは『点と線』。

清張はなぜ、名探偵のようなヒーローではなく、三等車に乗って出張したり、家では五右衛門風呂に入ったりするような庶民的刑事を事件の追求役として立てたのか。そこにはやはり、清張の生い立ちが関係しているように思われます。
筆者は、ここにエリートより庶民に共感する清張という特徴を見て取っているよ。それは次に紹介する作品『砂の器』では一層顕著になっていくとも。

そして、その『砂の器』。ここでは、

清張はなぜ、表向きに見えていることの「裏側」を探求しようとしたのでしょうか。そこには、東京中心のもの見方、言い換えれば東京中心史観を相対化したいという清張の思いがあるように感じられます。
そう、東北や山陰が舞台になるし、大阪空襲も東京との相対化の一つだとも言っているよ。清張は意図的にそのような相対化を考えたのだろうか。あるいは意識の中にあったものがそのように小説として表現されたのだろうか。

ノンフィクション部門は『日本の黒い霧』と『昭和史発掘』。作品の内容はともかくとして、筆者の分析は、

タコツボに入らず、独学で、タブーを恐れないスケールの大きな視野に立った清張のノンフィクションの魅力は、増すことすらあれ、失われることはないのではないでしょうか。
ということ。独学だからこそ、「タブーを恐れない」ということになるのだろか。そして、この「タブーを恐れない」が最後の紹介する小説『神々の乱心』に繋がるのだと。そう、タブーの一つが「天皇」だからね。

昭和のこと、戦争のこと、皇族のこと、我々は知らないことが多すぎるということを知った作品でした。

「松本清張」で読む昭和史 (NHK出版新書)
原 武史
NHK出版
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