夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)』を読んだよ。京都の街を思い出しながら。

『四畳半神話大系』と同様に京都の街を舞台とした大学生の恋愛活劇。活劇と書いてしまったけど、単なる恋愛物語ではないということを言いたいだけで、本来の活劇の意味とは違うかも。いや、アドベンチャー的であるのは確かで、京都鴨川周辺を舞台にして、男女二人の大学生が縦横無尽に活躍するのは確か。登場人物も数多く、それぞれがそれぞれの役割に則って、活躍していくのはアドベンチャー的。あぁ、RPGをイメージしてしまったけど、それは言い過ぎか。

とは言え、やっぱりこの物語で重要な視点は、彼と彼女の関係。彼の方は、

彼女が後輩として入部してきて以来、すすんで彼女の後塵を拝し、その後ろ姿を見つめに見つめて数ヶ月、もはや私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威といわれる男だ。
と自ら言わしめるほど、ひたすら直接的な行動には出ず、「外堀を埋め続ける」男。当然として、それは自覚していて、
大学に入学して以来、思えば、あらゆることに思案を重ねて、踏み出すべき一歩を遅延させることに汲々としていただけの、無益な歳月ではなかったか。彼女という城の外堀をめぐり、ただ疲弊していくだけの今も、その状況に変わりはない。多数の私が議論を始め、一切の決定的行動を阻止するのだ。
と、客観的な観察もできている。周りも人物もそれを分かっていて、茶々を入れる様子もこの物語の楽しみでもある。

最後に補足。彼が試行錯誤する場面。

「考えると不思議ではないか。この世に生をうける前、我々は塵であった。死してまた塵に返る。人であるよりも塵である方が遥かに長い。では死んでいるのが普通であって、生きているのはわずかな例外にすぎない。ならばなにゆえ、死が怖いのか」
そう、この考え方に激しく同意。しかも、人生の三分の一は寝ているのではないか。死も同じことだと考えるようになって早20年。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
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