放送禁止歌/森達也
『放送禁止歌 (知恵の森文庫)』を読んだよ。皆が思考を放棄。
森達也のドキュメンタリーは面白い。普段に耳にしている言葉をあまり理解していなかったりすることがよくあるけれども、今回のテーマの「放送禁止歌」もその一つかもしれない。そもそも、「放送禁止歌」って何なんだろう。誰がどういう基準・根拠で決めたんだろう…と考えるとわけわからん。
筆者も同様な疑問を感じたのだろうけど、それをドキュメンタリー番組にするという危険?な企画を起し、各方面と折衝していく中で、「放送禁止歌」とは何かに迫っていく。最終的にはその番組は放送されることになるんだけど。
前半は「放送禁止歌」になった楽曲やその歌手を追っていく。どうして、「放送禁止歌」になってしまったのか、本人はどう思っていたのか。そのうちの一人がなぎら健壱。『悲惨な戦い』という楽曲が放送禁止歌に指定されたことについてのインタビューでは、
「…結局、言葉に罪はないんだよね。使う人の意識の問題なんですよ。」という。そう、そんなに問題になるような歌詞ではないんだけど…。想像力の問題というか、けしからんと言う人は逆に想像しすぎなんじゃないかと…。
そして、この「放送禁止歌」の根源は何か?その答えは本書に譲るとして、その背景は自分自身にあることを主張する筆者。
「自覚性を持つこと。主語を自分にすること」という。無自覚という病。それは救われない。自分で考える事の放棄だよね。「放送禁止歌」というテーマがそこに行き着くとは…。いや、これはすべての人間の活動に通じることだよね。自覚しなくてはいけないな…。
文字にするとたったこれだけの作業だ。しかしこの作業が、メディアに、そして日本人全般に、そして実は誰よりも僕自身に、今、大きく欠落していることは間違いない。