目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)』を読んだよ。ものの「見かた」はいろいろ。

どうしてこの本が読みたい本リストに入っていたのか、記憶になし。でも、何かの本に参考文献として書かれていたのだろうと思う。自分にしてはいつも読んでいる本とは傾向が違うもの。それでも、誤解を恐れずに言うと、本書は非常に面白かった!あぁ、本書を読んだ後では「誤解を恐れず」なんて言うことが、ナンセンスと思うんだけど…。

本書は、視覚障害者の人たちが、目が見えない中で世界をどのように把握しているのか、そして、見える人たちとどのように違うのかを解説したもの。そういう意味で純粋な身体論ということ。筆者は生物学かもと言っているし。そして、見える人たちにとって、多少の想像はできるけど、実際はどうなのかというと、まさに驚きの連続。「そう捉えるか!?」という感じ。

「見えないこと」を考えるにあたって、注意しなくてはならないのは、「情報」と「意味」。「見えないこと」は情報不足と捉えてしまうけど、それは見える人たちの捉え方。少ない情報でもそこから意味を捉えることができれば、その人なりの世界が見えてくる。例として上がっているのは、4本足の椅子。これが3本足になった時にどうなんだろ。バランスさえ捉えられれば、3本でも椅子としては機能するわけで、その時の世界の見かたは変わってくる…ということ。「欠如」ではなくて「意味」が異なるということ。

そう考えていくと、「見えないこと」と「見えること」って何が違うんだろ…と。「見えないこと」の方が三次元的なイメージが広がったりするなど、事例を読むと納得することばかり。

最後に、

従来の考え方では、障害は個人に属していました。ところが、新しい考え方では、障害の原因は社会の側にあるとされた。見えないことが障害なのではなく、見えないから何かができなくなる、そのことが障害だと言うわけです。障害学の言葉でいえば、「個人モデル」から「社会モデル」の転換が起こったのです。
と、社会的な考え方の転換も紹介。うん、この発想はいい。この発想を忘れないようにしたいよね。

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)
伊藤 亜紗
光文社 (2015-04-16)
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