大いなる決断/柳田邦男
『大いなる決断 (講談社文庫 や 2-1)』を読んだよ。高度成長期の原点。
柳田邦男のノンフィクションが好き。しばらくは交通事故関係が続いていたけど、今回は経済。戦後の混乱期を乗り越え、日本の経済人はそこからさらにホップするために、どんなことをしてきたか、そして、どんな結果になったのか。様々な人物を取り上げて、詳細にルポしているよ。そして、時代は昭和三十年代。
では、どんな人物、企業、業界が登場するか。まずは、松下電器の松下幸之助。東洋レーヨンを代表する合成繊維産業。国民車として開発されたスバル360。日本企業として石油の採掘事業を興したアラビア石油。はたまた、石油化学コンビナートの構築とか、経団連の会長とか、ジャル・パックとか。
そして、どの事例にも共通するのがイノベーション。当時、イノベーションなどどいう言葉や概念はなかったと思うけど、他社より少しでも有利に事業を展開するにはどうしたらよいか、必死に考えた結果がそれぞれの成功に繋がっているよ。それがまさにイノベーションなんだよね。
経営哲学も相似形。例えば、プラスチック製品を加工し容器などを製造する吉野工業所の吉野社長。
誰にでも作れるものは、みんなが手がける。みんなが手がけて過剰生産になれば、値くずれが起きて、商売としては欠損を出すことになる。それは当たり前の理屈だが、まだ売れているときに生産から手を引く決断をするのは、できそうでなかなかできないことである。しかし、吉野の決断ははやく、ためらいがなかった。と。真似のできない技術を追い、みんながやっていることはそこそこにする。商売の鉄則だとは思うけど、流行っているものを追っかけたくなるのが人情。っていうか日本人っぽい…かな。
最後に、あとがきで筆者曰く、
私なりの結論をいうならば、昭和三十年代は、経済大国となる日本の経済構造と生活様式のパターンが形成された「転換」の時代としてとらえるのが、よいのではないかと思う。それはまさに「経済元年」と呼ぶべき時代であった。「転換」期には、激動のドラマがある。と。いや、ドラマを超えた現実が凄いんだけどね。その凄さは本書を読めばよく分かるよ。これがあったからこそ、今の時代があるんだよね。改めて、日本人って凄いなぁ~と思ったわけでした~。