教育の職業的意義/本田由紀

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)』を読んだよ。やっぱり学校は社会と繋がっている。

もう何年も前になるけど、NHKの番組「爆笑問題のニッポンの教養」に登場した本書の筆者の本田由紀氏。ちょっと生意気そうな口ぶりに太田がちょっかいを出すと、多少のイラつきを見せながらもやり返すというシーンが印象的だったような。自分にとっては、そんなことがインプとされていたので、読みたい本リストに長く留め置かれていたってわけ。

で、序章では、本書の目的が述べられているんだけど、その説明として、

それは、問題が山積みしている現代の日本社会の再編という大きな課題に、教育という一隅から取り組もうとすることであり、魔法のような解決策というよりは、言わば社会の体質改善ともいうべき地味な提言であることは否めない。
と筆者。そう、教育の難しさって魔法のような解決策がないってことが大きいよね。時間はかかるし、効果を測るのも難しい。でも、取り組まないと時間とともに泥沼にハマるごとく、落ちていくし。あぁ。

そして、過去にうまく適用されていた日本型雇用について。

しかし、「日本的雇用」を成立せしめていた条件はすでに変化した。今、特異な時期へのノスタルジーを超えて、何がほんとうに必要なのかを認識し、構想し、実現してゆくことが求められている。
労働者と雇用者がウィンウィンの関係だった時代はそれほど長くは続かなかったんだよね。今や完全にノスタルジーなのは確か…。

後半は「キャリア教育」について。その弊害について、

目標や活動が漠然としていながらも、「よきもの」として強力に推進されている「キャリア教育」は、そうした「漠然たるよきもの」を生徒個々人が自ら体現しなければならない、という圧力として、教育現場において実体化しているのである。
と筆者。なるほど、「キャリア教育」って耳障りはいいけれども、実態としてはそういう見解も分かる気がするな…。

最後に具体策。

すなわち具体的には、義務教育後の、後期中等教育以上の教育段階については、職業と一定の関連性をもつ専門分野に即した具体的な知識と技能の形成に、教育課程の一部を割り当てるという方策である。
そう、高校においては普通科一辺倒の打破、大学においてはL型G型と言われる大学の類型の話に繋がってくるね。あれ?もしかして、本書がその類型の議論の契機になっていたりして。やるなぁ、本田先生。
教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)
教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)本田 由紀

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