零式戦闘機/柳田邦男

零式戦闘機』を読んだよ。技術者魂の物語。

柳田邦男氏の著作を定期的に読んでいるけれども、今回も飛行機関係。それもさらに時代が遡り、戦前の話。だから、旅客機の話ではなく、戦闘機。そして、その名は「ゼロ戦」。正式には「零式艦上戦闘機」というらしい。読み方は「ゼロ」ではなく「レイ」だとか。

本書の主役は、ゼロ戦の設計者の堀越二郎氏。20代で設計主任に抜擢され、ゼロ戦以前に2機種の戦闘機の設計を担当。その2機種とも海軍の厳しい要件の上での設計だったけれども、技術者魂を発揮して、要件をクリアする。1機種目の七試艦上戦闘機の設計では、

使命感にあふれた枝原少将や前原少将の言葉に感銘を受け、七試計画の重大な意味をひしひしと感じ取っただけに、堀越は、一方で燃えるような意欲がわき上がってくるのを感じると同時に、一方では〈はたして自分にできるのか〉と、しだいに責任の重さに押しつぶされそうな気分にとらわれていた。
そう、この「やってみたい。でも、やりきれるか…。」という二つの気持ち。若い頃でないと、この相反する気持ちと素直に向き合えないよね。どちらも正直な自分の気持ちなんだろうから。

そして、相反する考え方は自分の気持ちだけではなく、戦闘機の設計でも難問として立ちふさがる。軍部の戦闘機に求める要件(規定)が、トレードオフの関係であるはずの速力と機動性を両立させるというもの。

堀越は、この規定自体に疑問を抱き、むしろこの考え方の逆を行ったほうが、新しい高速機の時代にふさわしいのではないかと考えたのだった。それは、重量軽減のために、旧来の強度規定の不合理性を打破したときと同じように、凡庸な常識の世界から超越しようとする、いかにも堀越らしい着想だった。
技術者は技術だけではなく、新しい発想も必要だということ。常識に囚われない着想が必要なんだよね。いや、それが技術者魂のひとつなのか。

ゼロ戦の活躍でいよいよ真珠湾攻撃。もし、ゼロ戦が開発されていなかったなら…。技術と社会は本来どういう関係であるべきなのだろうか。これって、永遠のテーマなのではないかなぁ〜。

零式戦闘機
零式戦闘機柳田邦男

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