考えるヒント/小林秀雄

考えるヒント』を読んだよ。考える以前に理解が…。

小林秀雄の著作の中では最も有名なものと思われる本書。自分が本屋に通い始めた頃から、文春文庫の棚には必ず見かけたものだし、この黄色の表紙はシンプルだけどインパクトがあるよね。そんなわけで子供の頃から気になっていた本書。どうして手を付けていなかったかというと難しそうだな…という印象から。

では、実際はどうだったか。そう、やっぱり難解。特に、「考えるヒント」と書かれた括りの部分では、頭にスッと入ってきたのはそれぞれの小文の冒頭部分だけ。あとは、一気に難しくなり、最後は???で終わる感じ。これは辛い読書。
そして、中間の「四季」という括りの部分では、難解さが緩み、ホッとする。そして、次の「ネヴァ河」で難解さがぶり返し、最後の「ソヴェットの旅」で多少緩むという繰り返し。

ただただ難解だとだけ言っていたのでは、読んだ意味がなくなってしまうので、短文で読めば、それなりになるほどと思われる箇所が多数あったので、その中から幾つかを紹介するよ。

まずは、

政治とは巨獣を飼いならす術だ。それ以上のものではあり得ない。理想国は空想に過ぎない。巨獣には一とかけらの精神もないという明察だけが、有効な飼い方を教える。この点で一歩でも譲れば、食われて了うであろう、と。
と。ここでの巨獣とはもちろん社会全体のこと。いや、まさに言い得て妙。その大きさといい、身勝手さといい…。

さらには、

考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当人は考えている積りだが、実は考える手間を省いている。そんな光景が到る処に見える。物を考えるとは、物を摑んだら離さぬという事だ。
とか。そっか、合理的と能率的は確かに違う。手間を省いてしまったのでは、考えたことにならないわけだよね。

すべての文章が昭和30年代に書かれたもの。50年以上経った今でも色褪せない内容に頭が下がるよね。考えるってことは、普遍なんだよね。

考えるヒント
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