わしらは怪しい探険隊/椎名誠

わしらは怪しい探険隊 (角川文庫)』を読んだよ。怪しくはないけど、うるさそう。

椎名誠の原点的作品と言えば、本書か『さらば国分寺書店のオババ』のどちらか。自分的には『オババ』かなぁという感じはする。読後の衝撃感が違うから。とは言え、本書はその後のいわゆる旅ルポものの原点となる作品と言えるんだろうね。あぁ、なんだか評論家じみたことを言ってしまった。

で、話は、椎名隊長が率いる「東日本なんでもケトばす会」(名前からして怪しい…。)が日本各地の離島でキャンプ生活を楽しむというもの。三島由紀夫の『潮騒』の舞台となった三重県神島でのキャンプが中心になるんだけど、途中で八丈島での話になったり、新潟県粟島での話になったり、飛びまくる。さらに、登場人物も多数なので、彼らの紹介と合わせて逸話が満載され、キャンプの話を人物の話がどっちが主題だか分からなくなったり。

そして、特徴的な文体。『オババ』はスーパーエッセイなんて呼ばれていたけど、その特徴は長い文章とそれに連動する形容詞句と副詞句の繰り返し。文章が長いと読みにくいっていうのが一般的だけど、それが意外にそうでもない。論理的な理由で長いわけではないからね。
なぜか唐突的に文学的な文章も登場するよ。

山の朝などというのはもっとも原則的だ。暗闇のなかでいっとき山全体の空気が息をひそめ、動きを止める。すると突然、虹色に近い光芒が遠くの山の背からキラリとはじけて、夜の粒子と朝の粒子が眼の前に冷気のなかで激しくまじり合い、それからあとはしばし口をつぐんで眺めているだけの、荘重な光のセレモニーが演じられていくのである。
とか。これがのちの椎名氏の小説群の助走といった感じなのだろうか。

それにしても、椎名氏周辺には話題が尽きない。あれでもかこれでもかと繰り出される面白話。止められないなぁ〜。

わしらは怪しい探険隊 (角川文庫)
わしらは怪しい探険隊 (角川文庫)椎名 誠

KADOKAWA / 角川書店 2014-10-25
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