もっとも美しい数学 ゲーム理論/トム・ジーグフリード

もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)』を読んだよ。美しさとは何か。

いくつかの数学本を読みたいんだけど、最近のものはどれも分厚くて、躊躇しそうなものばかり。こういう時はエイヤッと覚悟を決めてしまうのが常套手段。で、一冊選んだのが本書。図書館での配備が少なかったのも理由だけど。

本書のテーマは副題にある通り「ゲーム理論」。数学の分野でいうと応用数学の類だよね。そして、近代以降において、急速に注目されてきている分野でもあるわけ。その理由は応用範囲の広さ。本書に何度も出てくる「自然の法典」という単語がそれを象徴しているよ。
例えば、アダム・スミスの『国富論』について、

このような観点から見れば、スミスの著作は、宇宙を説明したニュートンの著作と同様に、人間の行動(経済におけるものだけでなく)を説明する法則の体系、すなわち自然の法典を見つけ出そうとする多様な知的試みが織りなす布の重要な糸だといえる。
と。つまりは人間の行動には科学的な説明が付くのだと言っているんだよね。当時のスミスにゲーム理論の発想があったのかというと、それは怪しいけれども、この発想はまさにゲーム理論の原点なんだよね。

その後、話は級数的に拡大していくよ。登場人物は、ノイマン、ナッシュ、フロイトダーウィン、マクスウェル、パスカルetcと、錚々たる面々。つまりは、物理学、生物学、脳神経学、遺伝学、分子論、統計力学と様々な分野でゲーム理論の適用が考えられていくってわけ。これこそが「自然の法典」、あるいは人間の活動そのものと言ってもいいかも。

最後に、ゲーム理論とは結局何なのか。

ゲーム理論はすべてを統合し、そうしようもなく混乱しているかに見えるこの世界を意味づける数学的な処方を提供して、自然の法典を追い求める科学者たちの努力が決して無意味でもなければ到達不可能でもないことをはっきりと示す。
ということ。つまりは。スッキリ出来ないものをスッキリさせるツールってわけかぁ。美しいなぁ〜。
もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)
もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)トム ジーグフリード Tom Siegfried

文藝春秋 2010-09-03
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