機械・春は馬車に乗って/横光利一

機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)』を読んだよ。国語の問題に出そう。

大正期から戦前を中心に活躍した小説家・横光利一の短編集。中学や高校の近代日本文学で一度は名前を聞いたことがあるはず。でも、メジャー級ではないから、気になる程度。積極的に読んでみようとはならない作者なんだろうね。どうして、今回読むことになったのかはまったく記憶になく、いつの間に読みたい本のリストに入っていたというわけ。

巻末の解説によると、作品の発表順にならんでいるようで、前半はどちらかと言うと私小説風の作品が多く、後半はどちらかと言うと理屈っぽいものが多いような。
私小説風の代表作はやっぱり『春は馬車に乗って』。病床の妻との会話を中心にその夫の心理状態を綿密に描いたもの。優しくなったり、意地悪になったり。理屈ではないから、余計に難しい…。

後者の代表作は『機械』。4人の男の心理描写を一人称で語り続ける。びっくりするのが、一つの文の長さがやたらに長いこと。例えば、

人間は敵でもないのに人から敵だと思われることは、その期間相手を馬鹿にしていられるだけ何となく楽しみなものであるが、その楽しみが実はこちらの空隙になっていることにはなかなか気附かぬもので、私が何の気もなく椅子を動かしたり裁断機を廻したりしかけると不意に金槌が頭の上から落って来たり、地金の真鍮板が積み重なったまま足元に崩れて来たり、安全なニスとエーテルの混合液のザボンがいつの間にかこちらの過失だとばかり思っていたのにそれが尽く軽部の仕業だと気附いた時には、考えれば考えるほどこれは油断をしていると生命まで狙われているのではないかと思われて来てひやりとさせられるようにまでなって来た。
という一文。長過ぎる…。今時ではちょっと考えられないよね。いや、それだけに一気に読ませる効果があるんだろうね。

ここで紹介した2作品。ともに本書の表題作になったわけだけど、これって偶然ではなく、やっぱり代表作として評価されているからなんだろうね。日本の近代文学、まだまだ読まなければいけない本がいっぱいあるなぁ〜。

機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)
機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)横光 利一

新潮社 1969-08-22
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