ヒトの見方/養老孟司

ヒトの見方 (ちくま文庫)』を読んだよ。様々な視点。

養老先生は久しぶり。以前はかなり読んだけど、本書は何故か引っ掛かってこなかったもの。養老先生の著作の中でも初期のもののはずだから、順序を意識すれば、既に読んでいるべきものだったのかもしれないけど。

それは置いておいて、本書は意外に難敵。いわゆる精神の緊張を伴う読書。あとがきにも書いてあったけど、「論文の内容を日本語で書いた」のが本書だから。特に養老先生の専門の解剖学の話になると、人体の部位が難解な日本語で登場し、それが読めないともうだめ。論理が繋がらなくなるから。

とは言え、まったく歯が立たないかと言えば、そうでもなく、いつもの養老節もあり、それがまた楽し。
例えば、

医学は昔から個を扱い、同時に誰にでも通用する法則を扱うのである。これはずいぶん器用な綱渡りなのである。医学の問題はここに起こる。
と言い、「科学的」な見方の問題点をあぶり出しているよ。医学は科学と言いながらも、個を扱う限り実学的だったりするからね。

もうひとつ。

人は誰でも、少なくとも自分自身については専門家だ、と考える。そこから、こと人間の問題に関する限り、専門家としての自信と偏狭さ、つまり独断と偏見とを生じる。だから、あらたに人間を論じ、なお人々を納得さすに足る、というのは、元来ずい分むずかしい芸であろう。
と。そう、これも「見方」の問題だよね。専門外については考えが及ばない分をどうフォローすればいいのだろう。

いや、読書とは常に緊張を伴うもの。だからこそ楽しいんだよね。養老先生に感謝。

ヒトの見方 (ちくま文庫)
ヒトの見方 (ちくま文庫)養老 孟司

筑摩書房 1991-12
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