火の島/新田次郎

火の島』を読んだよ。公務員であり、観測者でもあり。

新田次郎の文庫は絶版になってしまったものがあるような気がしていたんだけど、その一つが本書。藤原センセーのお陰で、改版が出ているものもあるんだけど、これからどうなっていくか心配。だから、本書は電子書籍で購入したもの。絶版になるのは仕方がないとしても、電子では残して欲しいなぁ〜。

物語の舞台は日本の遥か南方に浮かぶ孤島、鳥島。時は昭和40年。鳥島で発生した頻発地震への対応を気象観測所の所員の行動を通して描いたもの。

まずは、所員の行動。基本は観測することが仕事なんだけれども、ヘンだと感じることもあるわけ。それがこの事件の前兆だったわけだけど。

現象を一応ヘンだと考えることは気象観測者の心構えのようなものであった。
と、これは観測者として真っ当なこと。ところがこれが事実か否かを確認するまでは報告しないわけ。科学者的と言えば、それまでなんだけど…。

そして、火山調査官。避難を希望する所員と気象庁上層部との板挟み。しかも、科学者としての立場もあるし。
もっと微妙なのが所長。どちらの立場に立っても、批難されるのは必然の立場。だから、歩き回って唸るだけになってしまう。
主人公的な扱いの房野八郎も微妙な葛藤。科学者としての観測員の立場もあれば、所長とは上司部下の関係。さらに火山調査官との関係もあるし。でも、そこをうまくやってのけるのが、主人公たる所以なんだけど。

物語的にはちょっとハラハラドキドキ感もあり、引き込まれるように読了して、達成感が味わえる本でした〜。

そうそう、本書は他に短編二話が載っているんだけれども、うち「毛髪湿度計」も面白かったことを付記します〜。

火の島
火の島新田次郎

新潮社 2013-05-10
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