パンダの死体はよみがえる/遠藤秀紀
『パンダの死体はよみがえる (ちくま文庫)』を読んだよ。動物の死体を軽んじなかれ。
遠藤先生との最初の出会いは『解剖男』。面白かったので、いつかは次を読んでみたいと思っていたけど、それからもう数年。言い訳っぽいけど、地元の図書館に文庫版の蔵書が無かったから。
で、本書。動物の遺体を解剖することで、そこから新たな知見を得るという仕事のお話。ちょっとイメージが付きにくいかもしれないけど、本書の冒頭で5トンもあるゾウを解剖するシーンを読んでみると、その仕事の大変さがよく分かるよ。なんせ刃物がそう簡単には効かないわけだから。効かない理由、要は切っても切り口の肉の重みでナイフが押すことも引くこともできなくなってしまうと。
ゾウの解剖が終わると次はいよいよパンダ。クマ科の動物なのに草食のパンダがどうやって竹を掴むことができるのか。それは「偽の親指」に秘密があるんだけど、それを解剖学的に解き明かす。なるほどねぇ〜。
最後は遺体に対する思い。
しかし、真実を明らかにせんと闘う者は、遺体に真剣に取り組もうとしない体系に、遺体を委ねることはない。「臭い」とだけいって解剖学の歴史から消えていく価値観に代わって、私がそこに打ち出す新たな姿勢とは、まさに「遺体科学」だ。と。そして、パンダの遺体を「臭い臭い」と言って遠ざける高名な学者先生、遺体から必要なDNAだけ取り出すとあとは生ゴミとして捨ててしまう研究者らを糾弾し、
「遺体は全人類共有の財産である」とも。だからこそ、単なる効率化に走らず、遺体の保存に公的資金を投入すべしと訴える遠藤先生。
つい、目先のことに囚われがちな現代社会だけど、遠藤先生の視点も忘れないでいたいね。
パンダの死体はよみがえる (ちくま文庫) | |
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