時速33キロから始まる日本鉄道史/小島英俊
『時速33キロから始まる日本鉄道史 (朝日文庫)』を読んだよ。鉄道の観点って、幅広い。
「時速33キロから始まる」っていう長い修飾句だけど、要は日本の鉄道史。そして、単なる鉄道史ではなく、あらゆる角度から分析しているので、鉄道を取り巻くあれこれって感じで、鉄道好きにはたまらない一冊かも。
さらに、そのあれこれを、いろいろなデータを取り揃えて説明しているので、説得力があるわけ。数字で示されると、思わず納得する部分てあるよね。
例えば、混雑指数。ここではキロ密度というものを考えて、1キロ当たりの旅客数を算出しているよ。それを日本、フランス、アメリカと比較すると、日本の混雑度はダントツ。逆にアメリカの凋落ぶりは甚だしい。国土の広さ、路線の長さが関係しているんだろうけど、飛行機や自動車文化には勝てないんだろうね。鉄道が一番の省エネなのに。
で、本題の日本の鉄道史。明治期は国策として鉄道敷設が推進されていたけれども、その地域を見ると、意外にも東北や北海道が優先されていたのだと。ところが、これが皮肉なことに、農村人口の都市への流出を生み出すことになる。つまりは、
戦前の東北地方でも冷害による農業恐慌、農村の疲弊による娘の身売りなどの現象も「そこに鉄道があるから東京に娘が行けるのだ」という皮肉な矛盾も含んでいるのである。ということになる。鉄道の社会的な影響って計り知れないものだよね。
さらには、客車、列車等級、鉄路延伸、快適性、高速化などの話が盛りだくさん。特にトイレの話は乗客にとっては考えたことがないような話。そういえば、子どもの頃、列車のトイレは垂れ流しだったことを思い出す。いつの間にかタンク方式になっていたけど。そんなところにも鉄道関係者の努力があったんだよね。
本屋に行くと、鉄道関係の書籍がたくさん。それだけ話題が尽きない鉄道。オタクっぽいかもしれないけど、なんだか気になるんだよなぁ〜。
時速33キロから始まる日本鉄道史 (朝日文庫) | |
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