旅路/藤原てい

旅路 (中公文庫)』を読んだよ。何度読んでも壮絶。

『流れる星は生きている』を読んだ時、満州からの引き揚げの壮絶さをいやというほど知らされた。いや、これは戦争の壮絶さと言った方がいいね。ほんの70年ほど前の日本人が体験したことだと考えると、今の自分たちの生活って何だろうって思うし。

で、物語は筆者である藤原てい氏の半生記。
『流れる星は生きている』は新京から引き揚げる場面から、長野の実家に帰り着くところまでで終わっているけど、本書ではさらに時間を前後に伸ばし、学校に通い教員を目指していた頃から始まる。そして、新田次郎との結婚。

中盤からは『流れる星は生きている』とほとんど重複。っていうかダイジェスト版という感じ。とは言え、その内容に猛烈に引き込まれ、あっという間にページが進んでいったのは、『流れる星は生きている』と同じだったかも。

そして、後半。
帰国後の生活では北朝鮮での生活の影響が出ないわけはなく、体調が優れない筆者。それでも、辛い時は北朝鮮でのことを思った。

あの冷たく朝早く、市場のゴミ捨てをうろついたことを思った。今は、夫がいる、子供がいる、家がある、買い物をするお金がある。それよりも何よりも、誰も追いかけては来ない。
と。この感情は何回か本書の中で登場するよ。

そして、こんなことも。

これらを見ていると、私のものの見方、考え方、感じ方はすべて、あの引き揚げの苦難を原点としているのに気がついた。どん底の生活を生きぬいて来て、より深くこの人生を眺めることができるのではないかと。
と言い、それが逆に生きることへのよろこびに連なったとも。

一人の人間だけでもこれだけの影響があった戦争。戦争での死者数だけがその悲しみの数ではなく、幾人の犠牲の上に行われたのだろうか。あぁ、自分の生き方をよ〜く考えないといけないなぁ。

旅路 (中公文庫)
旅路 (中公文庫)藤原 てい

中央公論社 1986-07
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