48億の妄想/筒井康隆

48億の妄想 (文春文庫)』を読んだよ。これだけ妄想できれば立派なもの。

筒井康隆の長編処女作と言われている本書。単行本の初版が1965年というから、もうかれこれ50年ほど前になるわけ。時の筒井先生31歳。
で、分類的にはSFというか、奇想天外というか、微妙な感じの小説。何を意識したのか、何が言いたかったのかも不明。いや、面白ければそれでいいっていうのもあるけど。

SFチックなのは、アイというTVカメラが街中の至る所にあること。でも、その目的が『1984年』のようならば、近未来小説だけど、そうじゃない。単なるTVカメラなのだから。

つまりは、誰もがTVに出たがり、TVに映ることを意識して生活するという背景。なんだか、想像できるようなできないような。いや、本書が発表された当時はともかく、現代はSNSというプライベートメディアを意識せざるを得ない時代かも。だとすれば、まさに「48憶の妄想」の時代は現代にも当てはまるのか…。

それでも、そんな社会がヘンだと思う人も当然いて、

「本当の社会生活ってものが、別のどこか遠いところにあって、現実の社会生活は、本当の社会生活をカリカチュアライズしたものに過ぎないという気がするの。人間的なものがなくて、皮相で、嘘みたいに思えるの。」
と言う。そして、気がつく。
――彼女のいうことは、ぜんぶ本当だ!本当だ!
と。それでも、ドロドロとこの物語に沈んでいく主人公。

後半の戦争の場面はあまりにも冗長。ドタバタチックでもあるし。もう少しスッキリ終わらせてくれれば、読後感は悪くなかったのに…とちょっぴり残念感の本書でした〜。

48億の妄想 (文春文庫)
48億の妄想 (文春文庫)筒井 康隆

文藝春秋 1976-12-25
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