西洋中世の男と女/阿部謹也

西洋中世の男と女―聖性の呪縛の下で (ちくま学芸文庫)』を読んだよ。時代が変われば男女も変わる。

過去に何冊も読んでいる阿部先生。今回は積読状態だった1冊からチョイス。先生の研究テーマだった「西洋中世」だけど、本書はその中から男女の関係に特化したもの。以前の著作にも夫婦のあり方について、書かれていたものもあったように思うけど、あれは「世間論」としての取り上げ方だったかな。
副題は「聖性の呪縛の下で」。男女の関係が聖なるものなのか否か。それが、時代の変化で揺れ動く。

まずはナサニエル・ホーソーンという小説家の『緋文字』を紹介して、

中世全体の流れのなかで聖なるものが解体されていったのです。その果てに、十九世紀の半ばにホーソーンは、不義密通をした男女に、私たちのしたことは神聖なものであったと言わせているのです。ヨーロッパ古代から中世にかけて千数百年の歴史を、彼女のことばに収斂する形でとらえてみたいというのが私の話の主題です。
と言う阿部先生。これは『緋文字』を読んでみないと。背景を知っていてよかった。

では中世以前の古代ローマではどうだったのか?ある修辞家の自叙伝には、自分の妻のことを「私の息子の母」と表現している。これって、夫婦という関係の希薄さが見えるわけで、家父長制的な考え方に貫かれていたということ。これが後には個人対個人の関係に変化していくわけ。

何がその変化をもたらす契機となったのか。それがイエス・キリストの教え。

結婚とは男女の結合に基づく共同体であって、死のみがそれを分かつことができるという教えは、この時代としては革命的なものでした。
と。この考えが男女の関係を私的なものに変えていくわけ。その収斂が、エロイーズとアベラールの物語になるんだけど、この話が複雑で理解し難い。日本人的な感覚との差異があるのか。

やっぱり、阿部先生の淡々とした語り口がいいよね。歴史を知ることで今を考える。これが歴史家の視点ということを改めて思いました〜。

西洋中世の男と女―聖性の呪縛の下で (ちくま学芸文庫)
西洋中世の男と女―聖性の呪縛の下で (ちくま学芸文庫)阿部 謹也

筑摩書房 2007-10
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