紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている/佐々涼子
『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』を読んだよ。アッシにできるか?
2011年3月11日に発生した東日本大震災。本書は、この震災で甚大な被害にあった日本製紙石巻工場の復興の記録。
あれから3年経つけれども、ニュース以外のドキュメンタリーを読むのは初めて。TV番組でもこの手のドキュメンタリーは放送されていたけど、見るのを自然に避けていたかも。
それでも、本書を手にとったのは、製紙工場というテーマに絞ったドキュメンタリーだったからかもしれないね。でも、壮絶な被災であることには変わりはないんだけど。
本書の前半は震災当日の様子を綴る。そして、復興に向けて動き出す工場と人々。そんな中で工場長は、誰もが無理だと思える「半年復興」を宣言する。それを、
「半年復興」という目標は、明るい話題のない被災地で、彼らがすがりつくことのできる、唯一具体的な希望ではなかったか。と筆者。そう、これが長期の目標だったら、モチベーションの維持が難しかっただろうし、目標がぶれてしまったかもしれないね。
そして、報道と現実の違いも。ある居酒屋店主の話。
「それでもね、ひどいもんをいっぱい見ましたよ。報道で美談ばかりが言われるけど、そんなもんじゃない。人の汚いところをいっぱい見ました」と言う。同様なことが、日本製紙の人びとの証言にもあるよ。暴動まではいかないけれど、小さな悪はあったわけだよね。
そして、半年復興はなるか?結果は本書に譲る。そして、紙を造るとはどういうことかを考える。我々は本や新聞を読む時に、その紙を造る人たちのことを考えたことがあるだろうか。筆者は、
紙に生産者のサインはない。彼らにとって品質こそが何よりの雄弁なサインであり、彼らの存在証明なのである。と書いているよ。そう、この本の質感は彼らが造ったものなんだよね。技術の結晶でもあるわけ。それが、あの震災を乗り越えて維持されていることを思うと、紙の本にもまだまだ愛着が湧くものです〜。
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている | |
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