身近な野の草 日本のこころ/稲垣栄洋,三上修
『身近な野の草 日本のこころ (ちくま文庫)』を読んだよ。まだまだ知らない野草が…。
日本で見かける身近な野草を紹介した本。この手の本は、ある意味切りがない。野草の数は沢山あるし、それでも知らない野草も沢山あるし、読んでも読んでも尽きないから。勿論、以前に読んだ同様の本との重複はあるけど、だからと言ってそれがダメかというとそういうことは全くない。どちらかと言うと、植物図鑑を何度も眺めるような感覚かも。子供の頃、図鑑を飽きずに眺めていたように。
そんなわけで、本書のポイントは「ふるさとの風景を彩ってきた植物」。そして、それは日本人と自然との共存関係の歴史でもあるわけ。それが徐々に失われてきつつあることも事実で、少しでもそれが取り戻せたらというのが、筆者の願いと本書のねらいになっているんだよね。
では、幾つかの野の草を紹介。
まずは、ナズナ。春の七草のひとつだけど、早春の花は冬の厳しさも知っている。これを筆者は、
彼らにとって、冬は決して耐えるだけの季節ではない。ほかの植物が眠っているときだからこそ、自分たちはいち早く花を咲かせることができる。彼らにとって、冬はなくてはならない季節なのである。と言っているよ。さらに、このような植物は「冬眠」ならぬ「夏眠」するとも。これこそ、彩り豊かな日本の風景の一因なんだろうね。
もうひとつは、タンポポ。
外来種のタンポポが増えていて、日本のタンポポが減っているのは事実。それをもって外来タンポポが悪のように思われることがあるけれども、それは事実誤認。
在来の日本タンポポが減っているとしたら、それは日本の豊かな自然が失われていることにほかならない。外来のタンポポが増えているとしたら、それは植物の生えにくい都市化した環境が増えている証である。と筆者。タンポポは自分たちに適した場所で生きているだけ。だから、タンポポの分布を決めているのは人間であるとも。
身近な生き物の営みって、ホントに凄いよね。それを知らないという人間の浅はかさ。しかも、知らないのに知ったような人間。少しは謙虚にならなくては…。
身近な野の草 日本のこころ (ちくま文庫) | |
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