絶景鉄道 地図の旅/今尾恵介

絶景鉄道 地図の旅 (集英社新書)』を読んだよ。楽しみ方は時刻表と同じ。

地図とか鉄道とか地名とか言えば、この人、今尾恵介氏。本書も基本的にはその3つの観点からの蘊蓄を並べたもの。但し、重点の置き方的には、地図>鉄道>地名の順かな。だから、地図を眺めながら、鉄道のある風景を想像するという感じ。最後の観点は、地名って言うより駅名だけど。

ということで、まずは地図の話。今尾氏がこだわるのは、二万五千分の一地形図。まえがきでは、

私は中学一年生の頃に地形図の存在を知り、地図上で線路を眺めて楽しむ味を知ってやめられなくなった。
と告白。分かる。アッシもこれに近いから。そして、その理由を、
道路地図や市街地図ではなく地形図にこだわる理由は何かといえば、やはり地形図が「風景の見える地図」であることだ。
と言う。そう、地図を読めば読むほど、その風景がイメージできるんだよね。多少の訓練が必要かもしれないけど。そして、そのイメージを現地に行って確かめるのも、楽しみの一つかもしれないね。

では、幾つかの事例を紹介。
まずは、リアス式海岸。地図にも特徴が現れるよね。三陸紀勢本線の尾鷲〜熊野市が全国レベルでは有名だけど、首都圏ローカルでは、京浜急行の横須賀追浜付近。短いトンネルが連続し、その合間に駅という構造。そして、狭い谷間に家々が連なる。これを、

これは防御に優れたリアス式海岸ゆえ、「帝都」を守る軍港として発展した証だ。平地が乏しいのに海軍工廠などで働く多数の従業員が住むところも必要だから、家々が山に登るのは必然だったのである。
と分析しているよ。まさに地形と人間との関係。そして、地図からそこまで想像できるんだよね。

事例の二つ目は、線路の引き方。全国各地に、迂回路的な線路が多数あるよね。その理由は様々だけど、その多くは勾配の問題。だから、地形図を詳細に眺めてみると、勾配を考慮しながら線路が敷かれているのがよく分かる。勿論、例外もあるけど。
もう一つは軍事的な理由。鉄道は物資の輸送に欠かせなかったからね。

海上は敵の攻撃に晒される危険が大きく、民間の商船も多くが軍に徴用されて不足していた。輸送力確保のため、陸上輸送への切り替えは緊急の要請だった。
と当時の「陸運転移政策」を説明しているよ。その例が、函館本線駒ヶ岳の回りだったり、呉線、柳井線だったり。まさに時代に翻弄される鉄道ってわけ。

鉄道だけでも面白いことがたくさん。地図だけでも同様。それを掛け合わせる楽しさ。それを仮想で楽しめるってことが本書でよ〜く分かりました。

絶景鉄道 地図の旅 (集英社新書)
絶景鉄道 地図の旅 (集英社新書)今尾 恵介

集英社 2014-01-17
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