レイヤー化する世界/佐々木俊尚

レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書 410)』を読んだよ。“テクノロジーとの共犯”って…。

ITと社会についての著作が多い佐々木俊尚氏。副題に“テクノロジー”という単語が入っているから、今回も同様のテーマかと思ったが、意外に“テクノロジー”の話は少ない。どちからというと“社会”の割合が強いかも。
で、「レイヤー化する世界」とはどんな世界だろうか。と言うか、21世紀型の世界システムはどのような全体像なのか?ということを考えた時に、筆者の頭の中に浮かんだのが、「レイヤー化する世界」だったということ。
そんなわけで、本書はまずは世界史のお勉強から。中世まで遡って、その時代の世界の全体像を確認するところから始まるよ。

中世の世界って、一言でいうと大帝国の世界。特にイスラムが世界の中心で、ヨーロッパは辺境の地だったということ。そして、その帝国には明確な境界はなく、完全な支配ではなかったということ。国民という意識もないから、“帝国”と言っても、近代の侵略国家とは違うわけ。

そして、近代。これは“国民国家”の世界。大帝国が崩壊し、世界の中心はヨーロッパに移る。そして、小国の乱立と戦争の時代。ここに、“国民国家”の“ウチとソト”という概念が生まれるわけ。

ところが、テクノロジー(ここでは主にインターネット)の進展により、この“ウチとソト”という概念が通用しなくなってくる。

このようにコミュニケーションが<場>に変化していくということは、結果的にウチとソトの区別という人々の意識を壊していくことにつながっていくでしょう。そしてその意識の変化が、ウチソトから<場>への変化をさらに推し進めていくことになるのです。
と。ここで<場>という概念が登場するよ。この<場>の一つ一つがレイヤーとなるわけ。ここからは、この<場>とレイヤーが世界をどう変えていくかという話。まさに、グローバル化とか世界のフラット化ということになって、すべてが逆転する世界が21世紀型の世界システムなのだと。
だからこそ、「<場>と共犯関係になろうよね。」ということが筆者からのメッセージ。シンプルな言葉だけど、すごく怖いような…。いや共犯になるということが怖いのではなく、逆転する世界がもうすぐそこに来ているということに対してなんだけど…。
レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書 410)
レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書 410)佐々木 俊尚

NHK出版 2013-06-05
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