さとやま/鷲谷いづみ
『さとやま――生物多様性と生態系模様 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)』を読んだよ。「里山」ではなくて、「さとやま」とは。
久しぶりに岩波ジュニア新書。いつの間にか、<知の航海>シリーズなどというものが出ていて、本書がそれの第1号みたい。そもそも、この新書は<知の航海>シリーズと同様の趣旨で発足したものなんじゃないの?って思うけど…。
いきなり、話が脱線。さて、本書。
いままで「さとやま」というキーワードの本を読むと、どうしても日本の里山の魅力を伝えるものが多かったように思うけど、本書はどちらかというとグローバル。地球環境的というか、科学的にみた里山の生物多様性を考える本という感じかな。だから、COP10で日本が提案した「SATOYAMAイニシアティブ」の話も出てくるわけ。
で、副題は「生物多様性と生態系模様」。後者は分かりにくいかもしれないけど、要はこちらも生態系の多様性のこと。生態系を考えるのに、自らの生活と生物多様性や生態系のかかわりを認識するためのキーワードとして、自然の恩恵を広くさす「生態系サービス」というキーワードが登場するよ。
生物多様性は、それら「生態系サービス」の源泉であり、また、生態系が多様なサービスを提供することのできる良好な状態にあるかどうかを示すインディケータ(指標)なのです。と、これが生物多様性と生態系サービスとの関係。生物多様性の減少は生態系サービスのバランスを崩す行為だという関係になっているんだよね。
さて、前述の「SATOYAMAイニシアティブ」とはどのような取り組みなのか。
本書によると、
SATOYAMAイニシアティブは、古くから人間が利用してきた自然の価値を認識し、そこでの自然資源の持続可能な利用を推進することを介して、生物多様性の保全と持続可能な利用という条件の目的の達成に寄与することを目的として、「さとやま」とそこでの営みに関する情報を収集し、それらを広く共有しようという提案です。と言っているよ。
そこで、さとやま再生の事例として、日本各地での具体例が紹介されているよ。それぞれの事例は個々の利益だけを考えていたら、実践できないものばかり。これは日本の伝統的な共同体がまだ生きていることの証拠なんだよね。そういう意味でも、世界の環境問題って、やっぱり日本がイニシアティブを取っていかないとダメなのかなぁ〜って思ってしまうけど。いや、そう思わせられる本書でした〜。
さとやま――生物多様性と生態系模様 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ) | |
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