アメリカの大学・ニッポンの大学/苅谷剛彦

グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価 (中公新書ラクレ)』を読んだよ。まさに20年後の日本の大学。

筆者の苅谷剛彦氏は社会学者。教育についての著作も多く、アッシ的には本屋や図書館で見る度に気になっていた筆者の一人。
本書は、元々は1992年に単行本として上梓されたものを新書版として復刊したもの。新書版として、各章の最後に付記があり、章のテーマの現状について書かれているよ。

本書のテーマは副題にあるように3つ。まずはTAについて。アメリカのTA制度の歴史的経緯について概観し、その現在と日本のの大学への適用を考える。
確かにアメリカのTA制度は日本のそれに十分に参考になりそうな感じ。ただ、

アメリカにおけるTA制度の展開とその背後にあったアメリカの高等教育の特質、そして両者のダイナミズム。これらの相互関連を見落としてしまうと、この制度がもたらしうるメリットを日本の大学が上手に引き出すことは難しくなる。
と筆者。そう、何を第一とするか。特に教育か研究かの問題が重要だよね。

もう一つは、成績評価と授業評価の関係。筆者の見解は、両者がシラバスという「双務契約書」に基づいて結びついているものだということ。つまりは、

シラバスの作成という十分な授業計画を立てたうえで、教師が学生に何を期待するかをいわば契約書的に明示する。そのようなシラバスの存在を前提とした場合に、学生による授業評価は、授業改善という点で、効力を発揮すると考えられるのである。
と筆者。それに比べ、日本の大学は一方通行、いわゆる「片務契約書」。授業のあり方そのものの違いもあるけど、システムとして考えられていないんだよね。

アメリカの20年後が必ず日本にやってくると言われ、本書に書かれていることが着実に現実的な話になっている日本の大学。こんなにいい事例があるのに、歩みが遅い…。そう感じるギョーカイ関係者は少なくないだろうなぁ〜。

グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価 (中公新書ラクレ)
グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価 (中公新書ラクレ)苅谷 剛彦

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